湯河原気分
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寒かった。寒さに震えながら熱海駅ホーム下の待合室で休憩。トイレ休憩である。おしっこを済ませて、東海道線でひと駅戻って湯河原駅に到着すると、ナマコの病人なうえに(そんな言い方ないだろね)非力で要領の悪さにイライラして喧嘩してしまった。やれやれ・・・。なんだかこっちの方では雨が降っていたみたいだ。本当に寒いのだ。
湯河原駅前にはいかにも温泉街といった風に土産物屋が並んでいる。
早速、僕とナマコの実家に送るみやげを買った。帰りに買うのは時間がなくてばたばたと慌ててうっかりと無駄な買い物をしたりするから、先に買ってしまうことにしたのだ。大和の母親には「金目鯛の煮付け」、西葛西の義父には「かまぼこセット」を買った。よく考えてみたら、ありきたりのものだ。
みやげを買って宅配便で送ってもらった後、駅前から目的の旅館に電話すると「あ、電車ですか?」「はあ・・・」「電車に乗って来られたんですか?」「ああ、はいはい、そうです」「それでは駅前にあるロータリーの2番乗り場からバスに乗って“源泉境”というところで降りてください」と言う。「なんだ、迎えに来てくれないんだ?」ってナマコとぶつぶつ言いながらバスに乗りこんだ。
バスに乗って窓外の景色を見ると、温泉街の中心を流れる藤木川に沿って旅館が寄りそうように立ち並んではいるが、その多くが人気がなくて廃墟のようなイメージがある。さらに温泉街には、飲み屋とかバーとかキャバレーとか??? それに温泉場には決まりものの射的場などの遊興施設が少ないので温泉街の活気が少し失われているようだが“温泉旅情”を感じられないほどではないと思う。僕にはこのぐらい寂れていた方が温泉街として合格だ。そうこうする内にバスはどんどん奥湯河原の山の方に向かっていく。
僕とナマコを乗せたバスは15分ほどで現地に到着した。「源泉境バス停」は小さな橋を渡ってすぐだった。バスから降りて橋の上から渓流を見ると、川面にくっつくように垂れ下がったモミジや楓の葉は見事に紅葉していて、真っ赤な炎が川になだれ込んでいるような怪しさに満ちていた。橋の欄干を見ると「ニジマス禁漁」と赤い字で書かれた看板がかかっている。来年はここにフライを振りに(虹鱒を釣りに)来るか? なんて現実味のない夢を見る。
急な坂道を上って行くと温泉の源泉なんだろうか、真っ白い湯気を吐き出している錆だらけのボーリングの機械?が懐かしい感じがした。2人でダラダラと坂を歩いて行くと漸く旅館「花長園」に到着した。
旅館の建物を見て驚いた。旅館のホームページで見た建物の写真とは少し違って、いかにも古い旅館という感じがする。「ありゃりゃ?」ナマコと顔を見合わせてふたりとも少々不安になる。写真の恐ろしさを認識したのだった。
旅館に入ると電話に出た若い主人らしき男性が「
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