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牧場の娘
第五章
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「あんたのその目でね」
「ああ、こんな感じか」
「そう。のどかな感じでしょ」
「そうだな。牧場でな」
「好きな人は何処までも好きになる国よ」
 智和に対して言う。
「そういう国よ」
「のどかがいいんならか」
「そう、それがニュージーランドなのよ」
「成程な、それと羊だな」
「ニュージーランドの人口は知ってるわよね」
「三百万だよな」
 日本と比べるとかなり少ない、智和にとっては母国の人口が基準なのでどうしてもこう考えることだった。
「それで羊は」
「七千万よ」
「羊の方が多いんだな」
「それも圧倒的にね」
「羊がここまで多いとな」
「何か面白い?」
「面白いっていうかな」 
 智和はゲームを一時中断してアマンダに顔を向けた、そのうえで彼女に対してこんなことを言ったのである。
「見ていていいな」
「羊と相性がいいみたいね」
「みたいだな。犬とかキーウィとかともな」 
 鳥のキーウィである。
「いい感じだな」
「やっぱり相性いいみたいね。羊が好きでないとニュージーランドにはいられないわよ」
 何しろ羊の方が圧倒的に多いからだ、どうしてもそうなる。
「あんたは合格みたいだね」
「そうみたいだな。まあここに来てまだ短いけれどな」
「ここにいたいと思う?」
「今のところな」
 思うとアマンダに返した。
「思うな」
「そうなのね。それじゃあ」
「ああ、それでだよな」
「これからも宜しくね」
 アマンダは足を組んで座っていた、そのラフな姿勢で智和に言ってきた。
「一緒に働いていこう」
「お互いにな。じゃあな」
「ええ、それじゃあね」
 こう言葉を交えさせて二人は挨拶とした。その日アマンダはこのやり取りを終えると自分の部屋に戻り智和もゲームに専念した。
 だが二人はそれから一緒に仕事をすることが多くなった、二人共動きやすいファーマーの格好で働いていた。
 アマンダはよく馬に乗る、馬に乗れない智和はその彼女を見上げてこう言うのだった。
「何度見てもな」
「馬って大きいでしょ」
「ああ、本当にな」
「智和も馬に乗る?」
 アマンダは馬上から微笑んで智和に言ってきた。
「そうしてみる?行き来が楽になるわよ」
「けれど俺な」
「馬に乗れないっていうのね」
「ああ、乗ったことないけれどな」
「誰だってはじめはそうじゃない。この仕事だってそうでしょ」
「まあそれはな」
「だったら馬もね」
 それもだというのだ。
「乗ってみればいいから」
「そうか。それじゃあな」
「教えてあげるからさ。乗ってみる?」
「落ちたりしないよな」
「落ちない様に教えるし落ち方もあるから」
 落馬の仕方にも方法がある、落馬は馬に乗っていれば付きもので命の危険がある、だがそれでもだというのだ
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