第一章
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牧場の娘
篠原智和はきりっとした形のいい眉に奥二重の素朴な感じでそこにしっかりしたものがある目を持っている。顔は引き締まっている。
鼻はやや低めだが唇がしっかりしていてその鼻もよく見える、黒い髪で頭の横を短くして上を伸ばしている。
背は高く体格もいい、だが。
彼は今悩んでいた、大学の食堂で昼食を摂りながら友人にこう漏らしていた。
「就職先がなあ」
「まだ決まってないのかよ」
「面接受けてもそれでもな」
「全然駄目なんだな」
「受からないんだよ、一つもな」
「じゃあこのまま就職浪人か?」
友人はよくある事態をここで話に出した。
「それは辛いな」
「一応な、親戚から話は来てるんだよ」
智和はぼやきながら昼食のジンギスカン定食を食べながら述べた。
「一生食いっぱぐれない仕事があるってな」
「いいじゃないか、じゃあそこに行けよ」
友人もそれに乗る。
「一生食うのに困らないんだろ」
「そこ禅宗のお寺なんだよ」
智和は眉を思いきり顰めさせて友人に答えた。
「臨済宗のな」
「禅宗なあ。お坊さんになるのには修行が必要だけれどな」
「禅宗って厳しいだろ」
「滅茶苦茶厳しいぞ、それもかなりな」
こう言う智和だった。
「頭も剃らないといけないからな」
「嫌か」
「最後の最後の手段だろ、坊さんになるのはな」
「それでも最後の道があるだけましだろ」
「そっちの方は成り手に困ってるみたいだから誰も信仰さえあれば引く手あまただけれどな」
世間には知られていないことだ、こうした道もあるのだ。
だがそれでもだと、智和は言うのだった。
「修行が辛いからな」
「しかも髪の毛だよな」
「そうだよ。正直坊さんにはなりたくないんだよ」
これが智和の偽らざる本音だった。
「他の仕事に就きたいんだよ」
「他のなあ。そうだな」
友人はここで智和が今食べているそれを見た、ジンギスカン焼きをだ。
そのマトンの匂いも感じながらそして言ったのである。
「俺面白い話を聞いたんだけれどな」
「坊さん以外の就職先か?」
「御前外国でも平気か?」
「北朝鮮以外なら多分な」
「そうか。じゃあニュージーランドな」
そこはどうかというのだ。
「そこに行くか?」
「ニュージーランドかよ」
「ああ、そこはどうだよ」
「そうだな、行くか」
智和もそれに乗った、そしてだった。
彼はそのニュージーランドに行くことになった、展開は急だった。
ニュージーランドに行くとすぐにある場所に辿り着いた、そこはというと。
「あれっ、ここって」
「ああ、牧場だよ」
案内してくれた現地のおじさんが彼に話す。目の前の緑の絨毯は何処までも続く感じであり羊達がのどかに草を食
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