第五章
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身体だけは大きく始終生徒を罵倒し暴力さえ振るう、その教師でなければ社会に生きられない輩はというと。
「おいどけ!」
生徒達も同僚達も押しのけて自分だけが逃げようとしていた、汚れたジャージ姿で必死に。
彼は何としても自分だけが助かろうとしていた、だがその彼に。
後ろから何かが飛んで来た、それは一本の包丁だった。
包丁は平田の背中に突き刺さった、彼はそれを受けてショックで前から倒れ込んだ。
その彼めがけて頭の禿げた鳥に似た顔の目が完全に逝った男、何代か前の首相にそっくりなスーツの男がけたたましく喚きながら突っ込んで来た。
「ポッポッポーーーー!ハトポッポーーーーーー!」
叫び声まで鳥の様だった、その男は。
倒れた平田の背中に跨り刺さっていた包丁を両手で逆手に持ってその背中をさらに何度も何度も執拗に突き刺す、そのうえで。
「キヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!!!」
狂気そのものの笑い声をあげて鮮血に染まる、平田の醜い身体は醜い血で赤く染まり肉の塊になっていた。
男は平田を殺してからその血に塗れた顔で惨劇を目の前にして立ち尽くしていた悠衣子と陽子を見た、そして。
「ユキオオオオオオーーーーーーーーーーーー!!」
また狂気じみた叫び声をあげて包丁を持ち二人に襲い掛かる、だが。
二人はその男にすぐのペイントボールを投げた、それで怯ませて。
傍にあった石も投げる、それが男の目や頭を直撃した、鈍い音がした。
男の動きは完全に止まった、その一瞬にだった。
先生達は男に殺到しとにかくひたすら殴り持っている包丁を取り上げた、そのうえで動けなくなるまで叩きのめし縛ってだった。
警察に突き出した、それで何とかことを収めたのだった。
屑教師が一人死んだだけでことは収まった、だがだった。
難を逃れた二人は真っ青になった顔で渡り廊下に立ち尽くしていた、そこでだった。
陽子はその顔で隣にいる悠衣子に言った。
「ねえ」
「そうね」
悠衣子も応える。
「土手の影の通りよね」
「包丁を持った変質者ね」
「それ、出て来たわよね」
まさにそのままだった。
「あの影の通りになったけれど」
「これってまさか」
「あの土手ってやっぱり」
「絶対に何かあるわよ」
今度でもう確信した、間違いなかった。
それで悠衣子は男が警察に連行されていくのを見ながら陽子に言った。
「だからもうね」
「あの土手には?」
「行くの止めよう」
こう提案したのだ。
「絶対にね」
「そうね。本当に出て来たから」
包丁を持った変質者がだ。
「しかも襲い掛かってきたし」
「もしも用意してなかったら」
ペイントボール、それを投げて怯ませていないと。
「私達もあいつみたいになってたわね」
「そうね」
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