第一幕その三
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った。
「結婚だなんて」
「ですが本当のことでございますよ」
そうジュリエットに語り掛ける。
「そして子供も」
「私の子供」
「そうです。うちの息子も結構大きくなりました」
「それで婆やには今度お孫さんが産まれるのよね」
「そうでございます」
こう答えてまたにこりと笑った。
「おかしいですか?私がお婆ちゃんになるなんて」
「いえ」
そうではないがジュリエットには実感がないことも事実であった。
「そうではないけれど」
「まあ生きていればわかってきますよ」
「そうなの」
「そうですよ。私だってそうだったんですから」
「婆やも」
そう言われてもどうしても実感が沸かなかった。
「私も恋をして」
「ええ」
ジェルトルードは答える。
「私をうっとりとさせる夢の中に生き、優しい炎を宝物の様に見詰め、若さの陶酔の中に身を浸して」
「そういう日がすぐに来るのです」
「時として涙にくれ、心は恋に溺れる。陰気な冬から遠ざかり、薔薇の花びらの香りの中に愛の炎を感じられれば。私はそんな恋がしてみたいのだけれど」
「それはすべでお嬢様のものに」
「私のものに。そうなればいいのだけれど」
ジュリエットは祈っていた。恋が自分にも訪れることを。彼女はこの時はまだ恋に恋をしているだけであった。だがその時に。その恋が近付いてきていた。
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