第二章
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その議員前原とはもう話がついていた。見れば若く広い額を持つ男だった。
その彼が中尉を笑顔で迎えて言ってきた。
「では頼むよ」
「はい、わかっています」
中尉もにこりと笑って応える。そしてだった。
彼はすぐに動きだした。彼の正体を知る者は僅かで誰もが日本人である大神浩一郎だと思った。本当に誰も彼をロシア人とは思わなかった。
だがそれでもだ。公安にはこんな情報が入っていた。
「ソ連のスパイがですか」
「日本の政治家の秘書になっているのですか」
「その立場で潜り込み」
「活動をしているのですか」
「そうらしい」
密室の中で話が為されていた。
「どうやらな」
「ソ連の人間というと」
ここで一人が言った。
「アジア系でしょうか」
「アジア系の者が入っているのでしょうか」
「それで工作にあたっている」
「そうなのでしょうか」
「そこまではわからないがな」
それはまだ、だというのだ。
「だがそれでもだ」
「そうしたスパイが入ってきていますか」
「そのことは間違いないのですね」
「そして工作に当たっている」
「このことは間違いないですね」
「調べて必用とあらばあらゆる手段を講じる必要がある」
リーダーと思われる者が言った。
「とりあえずはな」
「はい、それではですね」
「早速調べましょう」
こうして公安が動きだした。だが中尉はあまりにも日本人的な容姿でありしかも日本の物腰もマスターしていたので気付かれなかった。
しかし公安も無能ではない。次第に気付いていっていた。
「与党にはいません」
「与党と近い立場にある政党にもです」
「どの議員の秘書も調べましたが」
「一人もいませんでした」
「怪しい者は」
「そうか」
公安の課長が部下達の報告に応えて頷いた。彼等は密室で話した時と同じく深刻な顔で話をしていた。
課長はその中でこう部下達に言った。
「では野党だな」
「はい、どうやら」
「野党にいます」
「野党の親ソ派の議員の秘書かと」
「その中に潜り込んでいる様です」
次第に的が絞られてきた。そしてさらにだった。
その野党の親ソ派の議員達の中から彼の名前があがった。
「前原代議士ですが」
「彼が怪しいです」
「ソ連に足しげく通っていますし」
彼の訪ソの数はソ連とパイプがあるという野党のその親ソ派の議員の中でも群を抜いて多かった、しかもだった。
「大学の恩師は共産主義者でした」
「しかもこの人物は左翼テロ組織との関係があります」
「その組織はソ連派ですし」
「常に何かあればソ連を擁護しています」
「野党の中でもソ連人と揶揄される程です」
「しかもです」
その前原についてさらに話された。
「彼の政治資金は不透明なものが多く」
「どうも
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