第四章
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「だからなんだよ」
「それは私もよ。とにかく私も働くかよ」
「それでか」
「そう、二人でやっていきましょう」
こう兄に言う妹だった。
「じゃあそういうことでね」
「言っても聞かねえよな」
「お兄ちゃんと同じよ」
にこりと笑って兄に返した。
「そういうことよ」
「勝手にしろ」
ビリーも遂に折れた、そしてだった。
二人は共に働いて生活費に学費を稼いだ、そうして過ごしていき。
リリィは遂にカレッジを卒業した、その卒業式に参列していた兄に笑顔で言った。
「卒業したわよ」
「ああ、本当にやったな」
「もう就職先決まってるからね」
「すぐにリストラとかされるなよ」
「そうしたらすぐに次に就職よ」
アメリカ人のその逞しさも見せる。
「そうするだけよ」
「強いな、おい」
「強くなければアメリカでは生きていけないわよ」
そもそも建国の頃から開拓に開発だった、この国にいれば自然と逞しくなる。そしてそれはリリィもなのである。
「それにここまで生きてきたし」
「それでか」
「そう、それでよ」
まさにそうだというのだ。
「それ位じゃへこたれないから」
「言うな、じゃあ俺も肩の荷が降りたしな」
「どうするの?それで」
「結婚だよ」
その話をここでする兄だった。
「これから相手見つけるからな」
「頑張ってね。ただね」
「ただ、何だよ」
「結婚のことはいいとして」
それは頑張ってくれというのだ、だがだった。
妹はここでからかう様な笑顔でこう兄に言ったのだった。
「お兄ちゃん今スーツだけれど」
「ああ、生まれてはじめて着たぜ」
「全然似合ってないわね」
本当に全く似合っていなかった、ビリーのワイルドな顔とその痩せて精悍なスタイルに荒っぽい着こなしはどう見てもスーツのものではない。
ネクタイの締め方も無茶苦茶だ、それで言うのだった。
「そこまで似合ってないなんてね」
「うるせえ、もうスーツなんて二度と着ないからな」
「その方がいいわね。じゃあこれからもね」
「ああ、宜しくな」
「結婚しても家を出ても」
「俺達は兄妹だからな」
「わかってるわ」
笑顔で言い合う二人だった。そのうえで幸せな卒業式を過ごしていた。
ビリーもリリィも卒業式の中にいる二人に過ぎない、だが二人の間にあるものは非常に深く強いものだった。
平凡な兄妹 完
2012・12・25
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