第一章
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平凡な兄妹
ビリー=シーンはロサンゼルスのダウンタウンの生まれだ、彼はこの街に妹と二人で暮らしている。
両親はいたが彼がハイスクールを卒業した時に交通事故で両方死んでしまった、その時妹のリリィはまだ十歳だった。
ビリーはそのリリィにこう言った。
「金のことは気にしなくていいからな」
「いいって?」
「仕事、儲かる仕事は幾らでもあるんだよ」
こう妹に言ったのである。
「それこそな」
「そうなの?」
「ああ、そうだよ」
まだ世間をよく知らない妹に笑顔で言う。ビリーはブ鳶色の鋭い目にロンドの髪をワイルドに後ろに撫でつけ精悍な顔をしている、身体つきはやや長身で細くそれでいて筋肉質だ、ラフな服装で首元を開いた赤いシャツが印象的だ、そこには妹と同じネックレスがある。
その彼がこう言ったのだ。
「それも全うな仕事がな」
「悪いことしなくていいの?」
「世の中悪いことをして儲ける奴もいるけれどな」
どの国でもいる、残念なことに。
「そんなことしたら御前が悲しむからな」
「だからしないの」
「御前は学校のことは気にするなよ」
笑顔での言葉だった。
「カレッジまで行かせてやるよ」
「けれどお兄ちゃんは」
リリィは兄がハイスクール出ということから尋ねた。兄と同じ目と髪の色だがその目は大きく優しい、顔立ちは人形の様に整っている。
その彼女があどけない感じの顔に申し訳ないものを見せて言ってきたのだ。
「カレッジは」
「そんなの気にするなよ」
ビリーは笑って妹のその気遣いをいいと返した。
「全然な」
「いいの?」
「俺は好きで働くことを選んだからな」
そもそもカレッジに合格する成績でもなかったがそれでもだ。
「だからだよ」
「自動車工場にだよね」
「そこに増やすからな」
仕事を掛け持ちしてそうしてだというのだ。
「御前をカレッジに行かせてそれにな」
「それに?」
「いい服にいい食い物な」
そうしたものもだというのだ。
「不自由させないからな」
「今よりもずっといい服や食べ物もなの」
「ああ、好きなだけ選ばせてやるよ」
そうするというのだ。
「だから御前は何の心配もするな」
「お兄ちゃんが働いてくれるから」
「ああ、頑張って勉強しろよ」
妹にはそれだけでいいと告げた、そうしてだった。
ビリーは必死に働いた、昼の自動車工場だけでなく。
夜はコンビニ、朝は中華街で肉を切っていた、休む間は殆どなかった。
家に帰ればシャワーを浴びて寝るだけだった。リリィはその兄を心配してこう言った。
「ちょっと休んだら?」
「休む暇なんてあるかよ」
これが返答だった。
「それに好きでやってるからな」
「好きでって。私の為じゃない
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