第五章
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「あんみつで」
「何か悪いな、些細なことなのに」
「些細じゃないわよ。弟が見付かったんだから」
佳奈は優しい笑顔を自分の弟にも向けていた。
「本当に助かったから」
「じゃあ」
「遠慮しないで。何杯でも食べて」
「いやいや、そこまでは言わないからさ」
今度は龍輝が笑って言った。
「何杯もとかさ」
「けれどそれでお礼させてもらっていいわよね」
その白玉あんみつでだというのだ。
「甘味処で」
「それじゃあな」
佳奈もお礼を受け取ることにした。そうしてだった。
龍輝は佳奈に案内されてその店に入った。店内は和風で落ち着いた造りである。その店の中の四人用のテーブルに向かい合って座った、佳奈の隣には男の子がいる。
佳奈は座ってから龍輝に言った。
「ここのお店はじめてじゃないわよね」
「ああ、子供の頃からこの商店街で遊んでるからな」
龍輝は素直に答えた。
「何度も入ってるさ」
「ここ大塚の地元なのね」
「地元も地元、家のすぐ傍なんだよ」
「あっ、そうなの」
「そうさ。それでな」
龍輝は商店街とこの辺りのことを詳しく話しだした。それは白玉あんみつが来てからもだった。店を出た時に佳奈は彼に笑顔で言った。
「ふうん、ここって面白い場所なのね」
「そうだよ。岩瀬はここに来たのははじめてだったんだな」
「ええ、そうだったの」
佳奈はこう龍輝に述べた。
「実はね」
「そうか、だからか」
「この子にちょっとおもちゃ買ってあげようって思って来たけれど」
それでここに来たというのだ。
「けれど。はじめてだから」
「さっきトイレがどうとかって言ってたよな」
「ええ、恥ずかしい話だけれど」
佳奈はこのことは困った顔で話す。
「そうだったの」
「そうか、トイレはコンビニがあるからな」
「コンビニ?」
「岩瀬は何処のトイレに行ったんだよ」
「まず公衆トイレ探したけrど」
「普通ないだろ、商店街には」
龍輝は少し呆れた顔で佳奈に述べた。
「駅前とか公園ならともかくな」
「探してから気付いたのよ」
「そうか。とにかくそっちはどうなったんだよ」
「パン屋さんのおトイレ借りたのよ」
「ああ、あそこな」
龍輝はわかっている顔で佳奈の言葉に頷く。
「あの店の娘って八条学園の商業科の一年だけれどな」
「ふうん、そうだったの」
「そうだよ。駅前の商店街の食堂の娘さんと同じクラスなんだよ」
「そっちの商店街も行ったことないけれど」
「というか岩瀬ってこっちは本当に来たことないんだな」
「本当にはじめてだったのよ」
「けれど楽しい場所だよね」
佳奈が手を引いている男の子が笑顔で言ってきた。
「ここって」
「気に入ったの?」
「うん、また来たいね」
「そうね。けれ
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