第四幕その三
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に問う。
「これから何処に行かれるのですか?」
「何処だと思われますか?」
「そこまでは」
何か不吉なものを感じていたが何処に行くのかはわからなかった。
「ですがやがてわかります」
「はあ」
「貴方が今永遠の幸福に向かわれているということが」
「永遠の幸福ですか」
「そうです」
神父は答えた。
「もうすぐです」
「ですが神父様」
ロミオの顔は晴れてはいなかった。
「何でしょうか」
「この夜の道は」
彼は心の中にある不吉な胸騒ぎを抑えられなくなっていたのだ。
「ここはまさか」
何かがわかってきた。
「間違いない、神父様」
前を進む神父に声をかける。
「ここは」
「ロミオ様」
だが神父は彼には答えない。逆に声をかけてきた。
「は、はい」
「これからは貴方だけでお進み下さい」
「僕だけで」
「そうです。それではこれで」
あえて気を利かして一人にしたのである。だがそれが間違いであった。
「間違いない、この道は」
ロミオは道の中で一人言った。
「墓場への道だ。ならジュリエットは」
墓場の方へ顔を向けた。
「いや、そんなことはない。そうだ、だから」
自分に言い聞かせながら先に進む。
墓場は暗闇の中に緑の草や蔦と赤い野の花が見える。それがまるで人の魂のようだ。それに白い墓標や十字架、それに捧げられている花。昼に見れば美しいのであろうが今は闇の中に浮かぶその白と赤、そして緑の世界がまるで異様な死の世界のようであった。
ロミオはその中にいる。キャブレット家の墓に向かっていた。
「行こう。そして彼女と会うんだ」
何かを否定しながら墓場を進む。だがそこにいたのだ。
物言わぬジュリエットであった。静かに微笑んで棺の中に微笑んでいた。
「そんな・・・・・・ジュリエット・・・・・・」
不安が今絶望となってしまった。
「どうしてこんなことを・・・・・・」
亡骸にすがりついてさめざめと泣く。
「僕は貴女だけが全てだったのに。貴女がいなくなったなんて」
ジュリエットは答えはしない。ただ死に顔を彼に見せているだけであった。
「どうしてなのだ、答えてくれ」
だがやはり答えはない。それがロミオの絶望をさらに深くさせたのであった。
「駄目なのか・・・・・・やはり」
観念したかのように頭を垂れた。そしてその亡骸を抱き寄せた。
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