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ロミオとジュリエット
第四幕その二
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第四幕その二

「私の為に」
「私はお嬢様の為にいますから」
「私の為に」
「そうです、だから今ここに来たのです」
「どうするつもりなの?」
 ジュリエットは顔を上げて彼女に問う。
「貴女は」
「神父様」
 ジェルトルードは神父に顔を向けてきた。
「はい。ジュリエット様」
 神父はまたジュリエットに声をかけてきた。
「はい」
「貴女は今決めなければならないのです」
「ロミオ様のことですか?」
「そうです。キャブレット卿はあることを考えられています」
「あることを」
 それを聞いて怪訝な顔になった。
「貴女の婚約者はティボルト様でしたね」
「ええ」
「あの方が亡くなられてお父様は考えておられるのです。貴女の御結婚を」
「そんな・・・・・・」
 ジュリエットはそれを聞いて顔にためらいの色を見せた。
「私はもうロミオ様と」
「御相手はパリス様ですが」
「あの方のことは御存知です」
 ジュリエットはそれを聞いて述べる。
「ですが私は」
「ロミオ様ですか」
「そうです。だから」
 それを受け入れることは出来ないのだ。ジュリエットにとっては。
「私はもう」
「ロミオ様を愛しておられるのですね」
「あの方しか愛してはおりません」
 こうまで言い切った。
「ですから」
「どうしてもですね」
「この想いが変わることはありません」
 それ程までにジュリエットの想いは一途だった。それが変わることは決してなかった。
「ですから」
「それでは」
 神父はそこまで聞いて断を下した。
「ジュリエット様」
 まずは彼女を見てきた。
「はい」
「これから私は貴女に死を与えます」
「それで私達は永遠に」
 天国で結ばれるのだと思った。だがそれは違っていた。
「いえ、違います」
「違うのですか」
「そうです。死といっても一時的なもの。貴女を鉛の白が覆い、薔薇の紅を覆い隠す。貴女はゆっくりと目を閉じられ死を迎えられます」
「それではもう」
「ですから御聞き下さい」
 また念を押す。
「すると周りは思います。貴女が亡くなられたと」
「ええ」
「ですがそれは一日だけのこと。一日が過ぎれば」
「私は」
「目が覚めます。そしてキャブレット家の忌まわしい束縛から解き放たれ」
「ロミオ様と」
 ジュリエットはロミオの名を出してきた。
「まずはそれからです。今を逃れ」
「これからの為に」
「一時の死を」
 そして懐から一瓶の薬を取り出した。
「この薬です」
「それがですか」
「そうです。これを飲まれれば」
「私は死ぬ」
「一日だけです」
 彼はジュリエットの目を見て語る。これまで以上に真剣な顔と目であった。
「宜しいですね」
「その一日が過ぎれば」
「貴女はロミ
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