第一話 箱庭召喚!
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る程だ。だから僕は、喧嘩で負けるのが嫌だったのだろう。
だけど、知識というものは人間では底が見えないのだ。だから僕は、底が見えないのを実感した瞬間に、諦めてしまった。本当に、僕は負け犬だ。これに関しては三下どころか、一部の他人から見れば侮蔑にあたるほどだ。難しい言葉を並べても、結局最後は諦めてしまっている。
つまり、僕は『底が見えない無限に人生という有限で立ち向かうこと』に恐怖を覚え、『人生という名の一つの道のりを最低限で歩き切った者が勝ち』などという自論を立てて、現実逃避をしていたのだ。
そしてその反面では、『生き残る為に必要最低限の取捨選択をする』などという最低値という限界を求めている。これは人生でたった一回しか試せない上に、最低値というものの底が見えないことだ。
これはつまり、無限に対して有限で立ち向かうのと同じくらいに無謀なことだ。ただ、数値の桁が違うだけであり、その無数の選択肢に関しては大差がないことなのだ。
最大限という無限を求めるのを諦めつつ、最低値という無限を追い求める。
我ながら、これには自嘲してしまう。明らかな矛盾を抱えている事を、こんなところで気付かされるとは・・・・・・醜態もいいところだ。
そんな矛盾を抱えている僕だからこそかもしれない。ある日、突然に不可思議な出来事が起こった。
それは、僕が中学一年生の小寒の頃だったか。
僕はいつも通り早起きをして、基礎体力を付ける為のトレーニングをしていた。伊達に生き残る為になどと言い訳をしておらず、それに最低限必要な体力を作ってはいた。
トレーニングとは、主に腹筋や背筋、腕立て伏せとランニングのことだ。ランニングは軽く自分の家と正反対の駅まで往復をしていたので――距離に表すと往復およそ九qといったところだろう。
そのランニングから帰宅して汗を流す為に風呂に入り、汗を流し終わったらいつもの如く朝ごはんを調理しようと思い、キッチンに入って卵焼きを作ろうとしたその時だった。
不意に、火を掛けようとしたフライパンの中に、一通の手紙が舞い降りてきたのだ。
「――? フライパンの上に、手紙?」
この光景はとてもシュールなものだった。何せ、まるで「私を焼いてください」と言うかの如く、フライパンの上に手紙がジャストで落ちてきたのだから、それはもう奇妙奇天烈極まりなかった。
一瞬、手紙が本当にそう言っているのかと思い、ご希望に沿って油を引いて焼こうかとも思ったのだが――家が火事になるといけないので思いとどまった。
「えーっと、差出人不明の手紙?」
右手に持ったサラダ油を一度置いて手紙を観察するが、差出人は一切分からなかった。しかし、確かにあて先は『古東勝殿へ』と達
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