第一話 箱庭召喚!
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と負けず嫌いだったのだと思う。といっても、それは単に僕が負けだと思う事に対して負けたくなかっただけだ。勉強ではいつも凡々の成績であり、それで満足していたのがその証拠。生きる為の必要最低限の知識さえあればいい、などと思い、勉強を怠ったのだ。他人が聞けば、ただの負け犬の遠吠えであるが、僕は本気でそう思っていた。この世界はつまり、『人生という名の一つの道のりを最低限で歩き切った者が勝ち』だと思っていたから。
だからこそ、僕は喧嘩で負けたくは無かった。喧嘩で負けると言うのはつまり、弱肉強食という、生命を維持する中で一番の恐怖に負ける可能性を残すという事だからだ。これを分かり易くいうのであれば、命を落とす危険性が増えるという意味だ。
だからだろうか。僕はサバイバルの知識や雑学については、普通の人より多くのことを知っていたかもしれない。
どんな状況下においても生き残る為に、なんとかそれなりの知識は身に付けようとしてのことだった。本当に生き残る為、それ以外に他意は無かったと思う。
もともと、人間の知識などこの世の全ての十分の一にも満たないのかもしれないのだ。そんな不完全な知識を常識として教えるのは結構な事だ。そうでもしなければ、それは長続きせずに、歴史の書物の中に消えてしまい、後世に引き継がれなくなるのは目に見えている。だから、僕はそういった知識を常識として教えるのは正しいと思っている。
しかし、それが一個人の単位になると、正直にいえば必要性に欠けてしまう。それに僕は後世に引き継ぐ為に知識を取りそろえている訳ではないのだ。生き残る為に、知識を取りそろえているのだ。
よく取捨選択という四字熟語を見かけるが、僕はまさにそれを実行しているだけである。生き残る為だけの知識を取りそろえ、他は捨てる。知識は知っている分に損は無いが、学ぶ分には時間を失うというペナルティが発生する。
そして、人生は有限だ。無限ならばいくらでも僕が知識を追求する。それはもう、果ての果てまで追求して、何も知ることが無くなるほどに追求しよう。探究心と好奇心はこれでもそれなりにある方だ。それくらい、僕にとっては苦にならない。
しかし、これをやらないのはきっと――あぁ、なるほど。僕は見落としをしていた。最初に「気合と根性さえあれば何でも出来る」などと言ったが、今考えれば、身近にそれでは出来ない事があるじゃないか。知識という、無限を有限で探究しなければならないものが。
――だからかもしれない。だから僕は、勉強だけは負けてもいいと思ったのかもしれない。『人生という名の一つの道のりを最低限で歩き切った者が勝ち』などと思ったのかもしれない。
喧嘩などの強さなど、所詮は生物というグループの中で限られており、底は見えている。人間にですら、底が見え
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