暁 〜小説投稿サイト〜
DQ4TS 導く光の物語(旧題:混沌に導かれし者たち) 五章
五章 導く光の物語
5-07心機一転
[5/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
まさか返せとは言わねえだろ」
「でも、わたしのこと、嫌いって言ってたから」
「はあ?心配して物くれたおっさんが?嬢ちゃんをか?」
「うん。陰気(いんき)くさい子供は、大嫌いって。さっさと、山を下りて、南の城に行けって」
「ずいぶんとまた、ひねくれたおっさんだな」
「よく、わからない」
「ま、気にすんな。返そうとしても、怒られるだけだからよ」
「……わかった」

(嫌いって、言ってたから。やっぱり、会いに行かないほうが、いいかな)


 話がまとまり、三人はそれぞれに行動を開始する。

「ミネア。ちっと、北の森に行ってくっから。町の情報のほうは、頼むわ」
「いいけど。ひとりで、大丈夫?」
「いざってこともねえだろうし。ルーラがありゃ、いつでも逃げ帰ってこれっからな」
「わかった。一応、気を付けて」
「おう」


 少女は読書ができる場所を探して歩き、開放されている城の庭園の、芝生に腰を下ろす。

 しばらく読書に(ふけ)っていると、()()に影が差した。
 見上げると、老人が立っている。

「読書かの。感心じゃの。」

(この人は、おじいさん。どう見ても、おじいさん。)

「こんにちは、おじいさん」
「うむ。こんにちは、お嬢ちゃん。」
「なにか、用、ですか?」
「ふむ。なに。お嬢ちゃんを見ておったら、なにやら昔を思い出しての。昔話は、お好きかの?」
「お話、してくれるの?」
「うむ。その昔、北の森の中に、木こりの親子が住んでおった。」
「木こりの。親子?」
「うむ。木こりの息子は、森の中で美しい娘と出会って、結婚までしたのじゃが……。木こりの息子は、ある日、雷に()たれて死んでしまったのじゃ。」
「死んじゃった、の」
「うむ。息子は死んだが、親父(おやじ)のほうは、今もひとりで木こりをしておるそうじゃ。」
「今は、ひとり、で。……それは、おとぎ話?」
「いいや。本当にあった話じゃよ。」
「そう。どうして、わたしに?」
「なぜじゃろうの。なぜか、思い出したんじゃ。」
「そう。お話ししてくれて、ありがとう」
「なんの。聞いてくれて、ありがとうの。」

 老人は、ゆっくりと歩き去った。

(木こりと天女(てんにょ)のお話に、似てる。
 でも、あれは、おとぎ話。
 これは、本当のお話。
 木こりのおじさんの、むすこ?子供?は、死んじゃった?
 結婚してからだから、大人になってから、死んじゃった?
 結婚して、子供は、生まれたのかな?
 おじさんは、ひとりだったから。いない、かな。
 おじさんは、ひとり。
 わたしも、ひとり、だった。
 ひとりは、(さび)しい。
 おじさんは、寂しくないの、かな)

 少女はしばし考え込み、そして読書
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ