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DQ4TS 導く光の物語(旧題:混沌に導かれし者たち) 五章
五章 導く光の物語
5-06少女の休日
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ですし」
「そうなの。たのしみ」


 町を通り抜け、城の脇の通路を通る。
 少女は()(どお)りする城の様子に気を()かれ、後で見に来るからと兄弟に(なだ)められる。


 コロシアムに入り、階段を上がって客席に出る。
 階段を上がり切ったところで少女が息を飲み、立ち尽くす。

「きれい……!」

 少女は知らないが、本来は勇壮(ゆうそう)、ともすれば()(こつ)(つく)りのコロシアムは、光沢(こうたく)のある布で美しく(おお)われ、花や宝飾品(ほうしょくひん)で飾り立てられ、王族の結婚式に相応(ふさわ)しい、()()びやかな中にも気品のある(よそお)いの式場に仕上げられていた。

「ユウ。ここでは、邪魔になってしまいますから。まずは、座りましょうか」

 立ち尽くす少女を(うなが)し、三人は席に着く。

「ほんとうに、きれいね!あ!あの人が、お姫様ね!」

 会場の中央、ひときわ華やかに飾り立てられた広い台の上に、一組の男女がいる。
 その女性のほうに、少女は目を奪われた。

 普通の娘が(あこが)れるような、美しいお姫様が出てくる恋物語などを、少女は知らずに育ったが、美しいものを好ましく思う気持ちは、(ひと)()みにある。

 山奥の質素(しっそ)な暮らしでは、見ることはおろか、想像してみることも無かった、本物のお姫様。
 物語を知っていれば、抜け出してきたかと、(ある)いは入り込んでしまったかと錯覚(さっかく)するような、輝く金の髪、豪華な宝冠(ティアラ)衣装(いしょう)(まと)い、繊細(せんさい)な花束を抱いた、美しいお姫様。

 悲しい出来事も、ひととき忘れられるほどに、少女は目の前の光景に()()った。

「……嬢ちゃんも、はしゃぐことがあんだな」
「あんなことがなければ、こっちのほうが普通だったんじゃないかな」
「だな。精々(せいぜい)、甘やかしてやるか」
「しばらくは、それくらいでちょうど良さそうだね。元々、かなり真面目なようだし」

 台座の上では、神父の問いかけに応え、王子が高らかに宣誓(せんせい)する。

「たとえ、世界が滅びようとも!ふたりの愛を、いつまでも!守り抜くと、誓う!」

 観客が盛り上がり、声援や口笛が聞こえる。

(世界が、滅びても。世界が、滅びたら。この人たちも、いなくなっちゃうのかな)

 美しい光景に見入りながら、ぼんやり思う。

(王子様、すごく嬉しそう。お姫様、きれいな笑顔。見てる人たち、みんな嬉しそう。幸せそう。なくなっちゃうのは。いや、だな)

 だから、自分が世界を救おう、とは。救ってみせる、とは。まだ、思えないけれど。
 少女は、目の前の幸せな光
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