暁 〜小説投稿サイト〜
DQ4TS 導く光の物語(旧題:混沌に導かれし者たち) 五章
五章 導く光の物語
5-04エンドールの兄弟
[5/6]
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
[2]
次話
獄の帝王も、ちゃんと、倒すから。あなたの仇が邪魔したら、それも、倒すから。それで、いいでしょう。」
少女はとうとう
堪
(
こら
)
え切れずに、声を上げて泣き出す。
青年が、
溜
(
た
)
め
息
(
いき
)
を
吐
(
つ
)
く。
「少し、私の話も、聞いてくれませんか。」
少女は答えられず、泣きながら青年を見る。
「あなたほど、辛い状況ではないのですが。私も、父を殺されました。私と、兄とは、父を殺した仇を討つために、旅をしています。」
少女は無言で、青年を見つめる。
「旅をする中で、多くの人と出会いました。共に旅した大事な人と、生き別れることもありました。父の存在には代えられませんが、それぞれがそれぞれに、大事な人たちです。」
少女は涙を流しながら、青年を見続ける。
「別れがあれば、出会いもあります。新しい出会いは、別れた人たちの存在を、無かったことにするものではないのです。」
少女は、青年を見つめる。
まだ、涙は止まらず、しゃくりあげている。
「あなたの隣にいるのが、たとえば私になっても、他の誰かになっても。かつてあなたの隣にいた人たちは、確かにそこにいたのです。あなたの心の居場所は、誰にも奪うことはできません。」
少女は、青年を見つめる。
涙は変わらず、流れている。
「どうか、新しい出会いを、怖がらないで。あなたから、みんなを奪った運命は、あなたと私たちとを、守るものでもあります。あなたと一緒にいても、私たちは殺されたりしません。ずっと、敵を倒すまで、一緒にいます。」
涙を流したまま、少女が呟く。
「殺され、ないの」
「はい」
「シンシアの、代わりじゃ、ないの」
「シンシアさんは、シンシアさんです。代わりになる者など、どこにもいません。私は、私です。」
「一緒に、いてくれるの」
「はい。共に、行きましょう。」
「わたしは、弱いのに。あのひとも、地獄の帝王も、あなたの仇も。倒せるか、わからないのに」
「先のことは、そのときになったら考えましょう。あなたも、仇を討ちたいのなら、どちらにしても、これから強くなろうとするのでしょう。無理に、勇者であろうとしなくても良いのです。私たちにも、お手伝いさせてください。」
「それで、いいの」
「はい」
誰かと、この人と一緒にいていい、ひとりで頑張らなくていい、勇者の運命を、今すぐ背負わなくてもいい。
思い詰めていた心に道を示され、
安堵
(
あんど
)
のあまり、少女は再び声を上げて泣き出す。
青年は胸を貸し、少女の頭を撫で、待つ。
ひとしきり泣き、やっと泣きやんだ少女に青年は微笑みかけ、
手巾
(
しゅきん
)
を渡して言う。
「申し遅れましたが、私はミネアといいます。」
「……ミネア。」
「はい。あ
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
[2]
次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]
違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
しおりを解除
[7]
小説案内ページ
[0]
目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約
/
プライバシーポリシー
利用マニュアル
/
ヘルプ
/
ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ