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DQ4TS 導く光の物語(旧題:混沌に導かれし者たち) 五章
五章 導く光の物語
5-04エンドールの兄弟
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獄の帝王も、ちゃんと、倒すから。あなたの仇が邪魔したら、それも、倒すから。それで、いいでしょう。」

 少女はとうとう(こら)え切れずに、声を上げて泣き出す。

 青年が、()(いき)()く。

「少し、私の話も、聞いてくれませんか。」

 少女は答えられず、泣きながら青年を見る。

「あなたほど、辛い状況ではないのですが。私も、父を殺されました。私と、兄とは、父を殺した仇を討つために、旅をしています。」

 少女は無言で、青年を見つめる。

「旅をする中で、多くの人と出会いました。共に旅した大事な人と、生き別れることもありました。父の存在には代えられませんが、それぞれがそれぞれに、大事な人たちです。」

 少女は涙を流しながら、青年を見続ける。

「別れがあれば、出会いもあります。新しい出会いは、別れた人たちの存在を、無かったことにするものではないのです。」

 少女は、青年を見つめる。
 まだ、涙は止まらず、しゃくりあげている。

「あなたの隣にいるのが、たとえば私になっても、他の誰かになっても。かつてあなたの隣にいた人たちは、確かにそこにいたのです。あなたの心の居場所は、誰にも奪うことはできません。」

 少女は、青年を見つめる。
 涙は変わらず、流れている。

「どうか、新しい出会いを、怖がらないで。あなたから、みんなを奪った運命は、あなたと私たちとを、守るものでもあります。あなたと一緒にいても、私たちは殺されたりしません。ずっと、敵を倒すまで、一緒にいます。」

 涙を流したまま、少女が呟く。

「殺され、ないの」
「はい」
「シンシアの、代わりじゃ、ないの」
「シンシアさんは、シンシアさんです。代わりになる者など、どこにもいません。私は、私です。」
「一緒に、いてくれるの」
「はい。共に、行きましょう。」
「わたしは、弱いのに。あのひとも、地獄の帝王も、あなたの仇も。倒せるか、わからないのに」
「先のことは、そのときになったら考えましょう。あなたも、仇を討ちたいのなら、どちらにしても、これから強くなろうとするのでしょう。無理に、勇者であろうとしなくても良いのです。私たちにも、お手伝いさせてください。」
「それで、いいの」
「はい」

 誰かと、この人と一緒にいていい、ひとりで頑張らなくていい、勇者の運命を、今すぐ背負わなくてもいい。

 思い詰めていた心に道を示され、安堵(あんど)のあまり、少女は再び声を上げて泣き出す。
 青年は胸を貸し、少女の頭を撫で、待つ。

 ひとしきり泣き、やっと泣きやんだ少女に青年は微笑みかけ、手巾(しゅきん)を渡して言う。

「申し遅れましたが、私はミネアといいます。」
「……ミネア。」
「はい。あ
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