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DQ4TS 導く光の物語(旧題:混沌に導かれし者たち) 五章
五章 導く光の物語
5-04エンドールの兄弟
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もしや、あなたは、勇者様!」

(やっぱり、わたしは勇者なの?)

 少女は困惑して、青年を見つめる。
 青年は、占い師の、遠くを見通す茫洋(ぼうよう)とした(まな)()しから、間近(まぢか)を見据える熱を()びた真剣な目つきになって、少女を見つめる。

「あなたを、探していました。邪悪なる者を、倒せる力を秘めた、あなたを。」
「……どうして、わたしを、探してたの?」
「あなたは、邪悪なる者を打ち倒す、運命(うんめい)の勇者。(とも)に旅をし、父の(かたき)を、その奥に控える邪悪を、倒すため。私たちは、あなたを探していました。」
「……そう。仲間に、なるの?」
「ええ。どうぞ私たちを、共にお連れください。」
「いらない」
「えっ?」
「わたしは、弱い。あなたの仇も、邪悪なものも、地獄の帝王も、倒せない。あなたの力には、なれない」
「それは、今はまだ、力が足りないかもしれませんが。あなたはいずれ、誰よりも強くなるはずです。それまではあなたを守り、その先も力となり、共に旅をしたいのです。私たちも、同じ運命に(みちび)かれた者なのです!」
「いらない。そんな運命、いらない。そんなののせいで、みんな死んだ。あの男に、殺された。わたしは、あの男を殺すの。ひとりで殺すの。仲間なんていらない、みんなの代わりなんていない。シンシアの代わりなんて、いらない!」

 穏やかで美しい青年は、誰かに、シンシアに似ていた。

 緑の髪と瞳、白い肌のシンシアに、紫の髪と瞳、(あさ)(ぐろ)い肌の青年。
 美しいという共通点以外、容姿(ようし)()(かよ)ったところは無いが、雰囲気が似ていた。
 そのことが、少女をより(かたく)なにさせた。

 青年は、目の前の少女を見つめる。

 邪悪なる者を、倒せる可能性を秘めた少女。まだ、幼い少女。
 みんなと呼ぶ誰か、親しい人たちを、殺されたという少女。

 自分も、父を殺された。
 でも、自分には兄がいる。故郷の人たちもいる。
 少女には、もう、誰もいないのかもしれない。

 自分も兄も、父を失ったとき、これほどに幼くは無かった。
 勇者としての彼女を支える前に、()(ひし)がれた幼い少女に、すべきことがあるのではないか。

 青年は息を深く吸い、吐き、再び微笑む。

「少し、お話ししませんか。」
「……いらない」
「私は、あなたの大事な人に、取って代わろうなどとは思っていません。どうしても嫌だというなら、無理にとは言いません。」
「……」
「悲しいことが、あったのでしょう。(かか)え切れない(つら)い出来事を、ひとりで抱え込もうとしてはいけません。」
「……」
「話すだけで、良いのです。話して、みてください。」

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