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DQ4TS 導く光の物語(旧題:混沌に導かれし者たち) 五章
五章 導く光の物語
5-02悲しみの少女
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ったら、分けてほしい」
「ちょっと待ってな。これでいいかい?」
「大丈夫。ありがとう」
言われた金額を払い、部屋に入る。
細かい手入れができる道具は無いが、もらった布で、武具の汚れを丁寧に落とす。
明日になったら、店を探して、道具を買い
揃
(
そろ
)
えねばならない。
(わたしが、世界を救う。そのために、みんなはわたしを、守ってた?そのせいで、みんなは死んだ?世界を、救う。みんなのいない、世界を。)
運ばれてきた料理を、食べる。
味はわからないが、とにかく食事は
摂
(
と
)
らないと、動けない。
(わたしが世界を救わないと、みんなが死んだのが無駄になる。でも、もう。みんな、いない。誰も、喜んでくれない)
お湯が運ばれ、食器が下げられる。
旅と戦いとで、汚れた体を拭く。
(世界を、救う。なにから、救う?どうやって、救うの?なにをすれば、いいの?)
体を拭き終え、残り湯で服を洗う。
(わたしは旅をするんだって、みんな言ってた。旅をして、探せばいいの?)
使い終わった
桶
(
おけ
)
を、言われた通りに廊下に出す。
ベッドに、横になる。
(わたしを殺そうとしたのは、わたしがいると、困るひと?世界を傷付ける、ひと?あのひと……デスピサロ!)
旅の詩人を
装
(
よそお
)
い、人の良い宿屋の主人に取り入り、自分に近付き、居場所を、正体を突き止めて、魔物を
率
(
ひき
)
いて村を襲った。
誰が悪かったのか、自分が悪かったのか。
(悪いのは、あのひと)
麻痺していた感情に、暗い憎しみの火が
灯
(
とも
)
る。
親しい人のいない世界を、喜んでくれる人のいない世界を。
救いたいかどうか、救えるかどうか、わからない。
でも、あの男は、許さない。
仲間なんていらない、シンシアやみんなの代わりなんていない。
自分は、ひとりで、あの男を探し出し、殺す。
親しい人たちを喜ばせるためだけに、真っ直ぐに生きてきた少女の心に、
染
(
し
)
みを落とすように、黒い想いが
宿
(
やど
)
った夜だった。
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