暁 〜小説投稿サイト〜
DQ4TS 導く光の物語(旧題:混沌に導かれし者たち) 五章
五章 導く光の物語
5-01山奥の少女
[6/7]

[1] [9] 最後 最初 [2]次話
ウ!」

 師に連れられて、村の最奥(さいおう)、地下倉庫の中へと辿り着く。

 中で働いていた倉庫番の男が、顔を上げる。

「どうした?そんなに慌てて。」
「魔物が、攻めてきた!」
「どひゃー!それじゃ、戦わなくては!」

 倉庫番はよく手入れされた武器を手に取り、外へと駆け出していく。

 師は倉庫の奥の壁を操作し、隠し部屋の扉を開いた。

 少女は、隠し部屋に押し込められる。

「師匠、どうしてみんな」
「いいか、よく聞けユウ。魔物たちの狙いは、お前の命!魔物たちは、お前が目障(めざわ)りなのだ。」
「どうして」
「お前には、秘められた力がある。いつの日か、どんな邪悪な者でも倒せるくらいに、強くなるだろう。しかし、今のお前はまだ弱い。とにかく逃げて、()()びるのだ!わかったなっ!」
「そんな、わかんないよ!ひとりで逃げて、生き延びるなんていやだ!」

 師に(すが)()こうとする少女を(さえぎ)るように、隠し部屋の扉が閉じられる。

「師匠!待って!わたしも、戦う!師匠!」

 隠し部屋の扉を何度も叩き、()()くが、()かない。

 他に出口が無いかと、必死になって部屋の中を引っ掻きまわしているうちに、シンシアが扉を(ひら)いてあらわれた。

「シンシア!」

 駆け寄り、縋り付く。

「シンシア、良かった!みんな、わたしを置いて、行っちゃうかと思った」

 シンシアは少女を抱きとめ、抱き締め、(ささや)く。

「ユウ……。今まで、君と一緒にいられて、とても楽しかったよ……。」
「シンシア?」

 シンシアは少女の身体を離し、扉や壁を探って傷付いた少女の手を取り、苦笑する。

「本当に、ユウは無茶(むちゃ)ばかりするね。……ホイミ。」

 少女の傷が、()える。
 シンシアは、少女の瞳を見据(みす)える。

「もう、治してはあげられないけれど。……大丈夫。君を、殺させはしない。……モシャス。」

 シンシアの、姿が(ゆが)む。
 歪みが消えた時、少女の目の前には、鏡のように自分と同じ姿をした少女がいた。

「……シンシア?……どうして、モシャスなんて」
「さようなら。ユウ……。」

 呆然(ぼうぜん)としている少女を置いて、少女の姿を写した若者は立ち去り、再び扉が閉じられる。

「……シンシア……シンシア!やだ!やめてよ!そんなの、いやだ!」

 (われ)に返った少女は、再び扉を、出口を探る。

 魔物たちの重い足音が、戦いの音が、近付いてくる。

『魔物たちの狙いは、お前の命!魔物たちは、お前が目障りなのだ。』

 師の言葉を、思い出す。
 (わず)かに残った冷静な心
[1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ