暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
ALO
〜妖精郷と魔法の歌劇〜
帰還………そして旅立ち
[1/5]
[8]
前話
[1]
次
最後
[2]
次話
空気に、匂いがある。
自分の意識がまだ存続していることより、まずそれに驚いた。
鼻孔に流れ込んでくる空気には大量の情報が含まれている。
鼻を刺すような消毒薬の匂い乾いた布の日向くさい匂い。果物の甘い匂い。そして、自分の体の匂い。
ゆっくりと眼を開ける。その途端、脳の奥までを突き刺すような強烈な白い光を感じ、慌てて目蓋を閉じる。
おそるおそる、もう一度目を開けてみる。様々な光の乱舞。
まるでアインクラッド第四十七層《フラワーガーデン》のようだ、とぼんやり思ってから、目に大量の液体がたまっていることに遅まきながら気が付いた。
目を瞬き、それらを弾き出そうとする。しかし、液体は後から後から湧いてくる。そして、気付いた。
これは涙だ、と。
泣いているのだった。
何故だろう。激しい喪失の余韻と、深い脱力感だけが胸の奥に切ない痛みとなって残っている。耳に、誰かの呼び声がこだましているような気がする。
強すぎる光に目を細めながら、どうにか涙を振り払う。そして、半ば癖にもなっている状況確認。
何か柔らかいものの上に横たわっているようだ。
天井らしきものが見える。
オフホワイトの光沢のあるパネルが格子状に並び、そのうちの幾つかは、奥に光源があるらしく柔らかく発光している。金属でできたスリットが視界の端にある。空調装置であろうか、低い唸りを上げながら空気を吐き出している。
………空調装置。つまり機械だ。
そんなものがある訳がない。どんな鍛冶スキルの達人でも機械は作れない。仮にあれが本当に、見たとおりのものだとしたら───ここは───
───ここはアインクラッドではない。
小日向蓮は目を見開いた。その思考によって、ようやく鈍っていた頭のギアが覚醒していく。
慌てて跳ね起きようと───したが、体が全く言うことを聞いてくれなかった。全身に力が入らない。四肢がひどく重く、ピクリとも動かない。
右肩が数センチだけ上がるが、すぐに情けなく沈み込んでしまう。
右手だけはどうにか動きそうだった。
プルプル震えているのをはっきりと自覚しながら、自分の体に掛けられている薄い布からそれを出し、目の前に持ち上げてみる。
驚くほど痩せ細ったその腕が、自分のものだとはしばらく信じられなかった。叩いたら、ガラスのように砕け散りそうな細い腕。これでは短剣さえも、持てるかどうか怪しい。
病的に白い肌をしげしげと見ていると、無数の産毛が生えている。皮膚の下には青みがかった無数の血管が走り、関節には細かいシワが寄っている。
恐ろしいほどにリアルだ。余りに生物的過ぎて、違和感を感じるほどに。
肘の内側には注入装置と思しき金属の管がテープで固定され、そこから細いコー
[8]
前話
[1]
次
最後
[2]
次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]
違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
しおりを解除
[7]
小説案内ページ
[0]
目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約
/
プライバシーポリシー
利用マニュアル
/
ヘルプ
/
ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ