暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
ALO
〜妖精郷と魔法の歌劇〜
帰還………そして旅立ち
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…………………………ぁ………」

蓮は思わず、声を上げた。二年間使われることのなかった喉に、鋭い痛みが走る。視界の端で、何が面白いのか楽しげにナースコールを連打していた画家が訝しそうにこちらを見てくる。

だが蓮は、それすらも意識していなかった。目を見開き、湧き上がってくる言葉。その名前を口に出す。

「ま……………い……」

マイ。胸の奥に焼きついていた痛みが鮮烈に蘇る。

マイ、共に暮らし、共に笑い、共に居て、世界の終焉と共に消滅した少女…………

夢だったのだろうか………?仮想世界で見た、美しい幻影………?ふとそんな迷いに囚われる。

いや、彼女は確かに存在した。一緒に笑い、泣き、眠りについたあの日々が夢であるはずもない。

だがその思考は同時に、蓮にある現実を突きつけていた。それはすなわち、マイが消滅した、ということ。あの純白の髪も、愛らしい金と銀の両の瞳も、あの人懐っこい笑顔さえも。

全てが、消えた。全てが、なくなった。全てを、失った。

そう思った途端、彼女への愛しさ、狂おしいほどの思慕が全身に満ち溢れるのを蓮は感じた。

会いたい。

髪を触りたい。

他愛のない会話をしたい。

あの声で、呼んで欲しい。

訳もなく、全身の力を使って起き上がろうとした。そこでようやく頭が固定されていることに気付く。

顎の下でロックされている硬質のハーネスを手探りで解除する。何か重いものを被っている。両手でそれをどうにかしてむしり取る。

レンは上体を起こし、手の中にある物体を見つめた。濃紺に塗装された流線型のヘルメットだった。後頭部に長く伸びたパッドから、同じくブルーのケーブルが延び、床へと続いている。

これは───

ナーヴギアだ。蓮はこれによって二年もの間、あの世界に閉じ込められていたのだ。ギアの電源は落ちていた。記憶にあるその外装は輝くような光沢を纏っていたのだが、いまや塗装はくすんで、エッジ部分では剥げ落ちて軽合金の地が露出している。

この内部に、あの世界の記憶の全てがある───。そんな感慨に捕らわれて、蓮はギアの表面をそっと撫でた。

そんなレンを隣から面白そうに見ていた画家だったが、ふと何かを思い出したかのようにごそごそ革ジャンの中を探っている。

やがてそこから出てきたのは、大き目の茶封筒。どうでもいいが、何故そんなものが入っているのだ。某青猫ロボットのポケットか。

「そういやぁ、すっかり忘れてた。これ、相馬からだ」

「兄ちゃんから?」

疑問に思いながら、受け取る蓮。

いまだに四肢は重いが、それでもいくらかは慣れた。

受け取った茶封筒は、中に何か硬くて大きいものが入っているようで少しごわついていた。封を開け、中から出てきた
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