第1話 遭遇
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いたいって」
「む?あ、ああ。それなんだがね」
言われ、少しは落ち着いたのか。
椅子を直し、付きっ放しだった店のテレビに視線を滑らせた。
「君は、アイドルという職業についてどう思うかね?」
「はあ、アイドル・・・・ですか」
「うむ、率直な意見を聞かせてくれ給え」
「そうですね、うーん」
男の視線の先には、何かの音楽番組が映っていた。
其処では、笑顔の少女が歌を歌っていた。
もしかしたら今流行しているアイドルなのかも知れないが、五代には良く解らなかった。
そもそも、旅先でそういった情報を入手する事は難しい。
精々が、大物グループの海外公演のチラシを見る位だ。
そんな程度の興味しか持っては居なかった。
だが
「やっぱり大変なんだろうけど、凄く素敵な仕事なんだろうと思います」
それと、好感の問題は、又別の話だ。
そもそも、五代はそういった職業の人間に、尊敬に近い感情を抱いている。
何故なら
「ほう、薬に売春、八百長に裏切り。
ぱっと思いつくだけでも芸能界にはコレだけの汚いイメージがあるというのに、かね?
それなのに君は何故、素敵な職業だと言えるのだね?」
「だって、誰かの笑顔の為に頑張れるって凄く素敵な事じゃないですか」
彼女達は、自分の憧れを、実行している人間だと思えるからだ。
五代にも、一定の音楽の心得はある。
それを芸として周囲の人間を笑顔にした事もある。
そういった事をより広い規模でする彼女達を、五代は素直に尊敬していた。
「俺がこの子位の歳の頃は、そんな事絶対に出来ませんでしたよ。
いやー、神崎先生に会ってなかったらどうなってたかな、あの時の俺
あ、神崎先生って言うのは俺が小学校の時の担任の先生なんですけどね?
もうそれがすっっっごく素敵な先生で・・・・・」
「う、うむ。それは良いから続きを聞かせてくれ給え」
「あ、話逸れちゃいましたね。すいません」
気を悪くする様子一つ無く、五代は笑顔を浮かべた。
笑顔と共に見ると、テレビの向こうの少女を見る目が、優しい物である事が解る。
「昔、俺がその神崎先生に言われたことなんですけどね。
どんな時でも誰かの笑顔の為に頑張れるって凄く素敵な事だと思わないかって。
勿論、俺も今でもそう思います。
だから、そういう噂を聞いても、あんまりイメージ悪いとかは無いですね」
「愛想を尽かしたりは・・・・・しないのかね?
最近はアイドルの問題も多数出てきている。そういった事に対して」
「うーん・・・・・・・・・まあきっと大丈夫ですよ。
だって俺も、ファンだもん」
言い切り、笑顔と共に親指を力強く立てた。
立てた親指を突き出し、男に見せ、えくぼが出来る程の笑顔を作った。
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