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Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)
第三十話 散り逝くものと現れる雷光
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言いつつも私達とあの子を離れさしたことも含めて」

「そう思うのは貴様の勝手だ。私はただ貴様との決闘に横槍を入れられたくなかっただけだ」

「そういうことにしておきますよ。まあ、老婆心という単語もなんだか嫌なものですね。ずっと若くいられるのが、結構好きではあったんですけど。後は若い子達に任せます。元々人の世話を焼く性分でもないし」

自嘲気味に微笑みながら剣を構えるベアトリス。剣をかまえる理由は実に自分勝手で個人的な用件に過ぎない。

「そもそも私は、追いかける側の人間ですから」

命懸けで、弾雨の下を、狂気の嵐を、怒号と騒乱渦巻く激動の時代を追いかけ続けた。

(怖かったし辛かったし腹が立ったし悲しかった。でも今の今までなおも挫けずに走り続けたのは―――)

「あなたがいたからです。ヴィッテンブルグ少佐」

士官学校を出たばかりの小娘に過ぎなかったあの頃から。

「私には敬愛する人がいます。その人はちょっと恐くて、かなり傲慢で信じられないくらいの理想主義者で。
付き合わされる部下としては、堪ったものじゃありませんよ。その人は自分に出来ること、やれることを、周りもやって当然だと思ってます。そしてまた困ったことに、かなり有能だから性質が悪い。
お陰で馬鹿とか阿呆とか鈍間とか、散々言われて怒られて」

(小突かれ、蹴られ、叩かれて、そしてときには待ってくれて……)

「追いかけて追いかけて追いかけて追いかけて――――――」

少女はまるで恋する乙女のように付き続けて、理想に達したときに見せてくれる景色はどんなものなのかと思い描いて、必死に追いかけ続けた。

「それなのに……行き着く果ての楽園(ヴァルハラ)は、こんな所なのですかッ!!」

剣先から雷光が迸る。それを目にしながらエレオノーレが浮かべる表情は失笑であった。

「嘆かわしいですよ、少佐」

あなたの描いた理想はこんなものだったのかと。嘆くように呟くベアトリス。それに対するエレオノーレの解は、

「くだらん」

その一言に全てが集約されていた。

「口上はそれまでか?ならば来るがいい。“私 に 抜 か せ れ ば 貴 様 は 終 わ る ぞ ”」

その言葉が開戦の狼煙だった。阿吽の呼吸ともいえる両者の発端。言葉と同時に迸る稲妻。
迅雷一閃―――これが両者の決闘の幕開けだった。
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