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Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)
第三十話 散り逝くものと現れる雷光
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ど無いように見える。だがこれで五分。オレと恵梨依の二人で今の奴と同格なのだ。撃ち斃すの先か、貫かれるのが先か。どちらが勝つのかは分からず天秤の針は揺れ続ける。
「俺に、勝てるのは………『あの人』だけだアアァァァァ―――――――――――――――!!!」
「蓮以外に………俺が負けっかよォォ――――――――――!!!!」
放たれる二つの銃弾。それと同時に飛び出したヴィルヘルム。二つの凶弾はヴィルヘルムを穿ち、血飛沫を飛ばす。確実に致命傷といえるそれ。だが、
(勢いが、止まらねぇッ!?)
決して軽視出来ない、どころか致命的な傷を前に止まることなく、寧ろ勢いを加速させる。
―――敗北―――
脳裏に浮かぶその言葉、否定できる材料が見つからず。ほんの一瞬、間に合わない。後一歩、いや半歩という僅かな差で届かない。走馬灯なんて馬鹿げたものは見えず、目に映るのは腕を伸ばし勝利を確信している白皙の魔人だけ。諦めなどない。しかし、勝てる要素が存在しない。
そんな中で俺は完全に既知《とき》が止まるのを見た。
******
―――諏訪原大橋―――
現れたキルヒアイゼンは螢に近づいて抱きしめる。それを邪魔立てするほどカリグラも無粋ではなかった。尤もザミエルがそれを警戒していたことも理由ではあるが。
「ベアトリス……」
「久しぶり、螢。ありがとう」
それだけの短い会話とも言えぬような言葉。だが、それでも彼女達にとってはそれだけで十分だった。抱きしめるのを止め、離れると同時に声が掛かる。
「久しいな、キルヒアイゼン」
「ヴィッテンブルグ、少佐……!」
「ああ、やはり違うよ。そこの小娘に僅かにでも幻想を懐いた自分を責めたいな。貴様はそうでなくてはならん。六十年ぶりだ。積もる話も数多あろう」
「私は……」
「ああ、悪くない。よく戻ってきた嬉しいぞ。
アレの茶番に乗ってやった甲斐もある。褒美を受け取るがいい」
瞬間、鋼鉄の沸点すら越える灼熱がベアトリスを飲み込み、橋は溶け、共に別の戦場へと移す。
「何人たりとも邪魔はさせん。貴様と私と二人だけのあの頃へ―――還り、共に語らおう。待ち望んだぞ、この時を」
「私は、私も……あなたを救います、ヴィッテンブルグ少佐!剣も誇りも、人であることも棄てたあなたに―――私は絶対負けたりしない!!」
「ふふ、ふははははははははははははははは――――――――抜かせ小娘がァッ!!」
(凛冽で、清冽で、どこまでも青臭い愚かな、気高き百合のような戦乙女よ。やはり貴様は、未来永劫私のものだ)
******
「ベアトリス!!」
業火に押し潰されたキルヒアイゼンを目の当たりにし、螢は叫ぶ。橋は中
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