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Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)
第三十話 散り逝くものと現れる雷光
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対一で互角の体裁を為していた戦いは一時であろうとも一人が動かなくなることによって崩れ始める。
「ハッ、諦めろや。テメエ等の負けだ」
「グッ!?」
今まで自分にとって有利な距離を保ち続けてきた司狼だが、ティトゥスとの連携が取れなくなり接近を許してしまう。近接戦で喰らわせた
鋼鉄
(
Eiserne
)
の処女
(
Jungfrau
)
はヴィルヘルムにとって牽制に成り得ない。その程度の事で下がるような臆病者では無いのだから。
頭を潰さんとしたヴィルヘルムの腕を身を捻って躱し、お返しとばかりに逆立ちしながら放った司狼の蹴りは掴まれ、逆に吹き飛ばされる。
そのまま教会に激突しる司狼。必死に痛みを堪え立ち上がるがティトゥスも含め、既に満身創痍、襤褸雑巾のような状態だった。
「ああ、今度こそこれで仕舞い見てえだな。ホントによう、テメエ等との戦いは満足いくもんだったぜ。あの狂犬野郎との戦いにも劣らねえよ。名残惜しいがまあこれでおさらばだ。死にな」
そしてその腕は司狼を貫かんと動き―――――――
******
俺は膝を着いてから数瞬程だが自分の意識を失っていることに気付いた。それでも銃を持ち、立っていたのは長いこと戦場を駆けた本能が勝手に動いたのだろうと判断する。
「ッ…まだ終わるわけには往かないよね。こんなに満ち足りてる戦い何だからさ」
体の自由は利かないが、これまでもそれ以上に危険だった状態でいた事が過去に何度かある俺にとっては今更のことだった。そう思うと同時に、司狼が吹き飛ばされるのが目に映る。
ヴィルヘルムが何か言っているが耳が遠く、よく聞き取れなかった。尤も口元の動きから充足と名残惜しさを感じているのだろうと予想出来たけど。
視界にはゆっくりと、だが現実にはとても速くヴィルヘルムの腕が司狼を貫こうとしているのが見えた。そして、
「――――ッ…ガハッッ……」
気付けば俺は無意識に司狼の前に立ち、『物質生成(Die Generation des Materials)』で造られた歪な丸い物体を持ちながら心臓を貫かれていた。
「テメエ、まだ動けたのか?まあいい、そのまま死ねや」
心臓を貫いた張本人であるヴィルヘルムがそう呟く。確かに俺自身ですら今の状態で先程までいた位置から動けるとは思っていなかった。だが、
「カフッ……どうせなら一緒に死になよ」
「アァ?」
今が良いなら未来のことなんか如何でもいい。と常々思っている俺だが、この先の司狼や櫻井、藤井達の未来が良いものだったら良いのにと柄にもなく考えていた自分に驚く。俺は彼らの輪から一歩引いて見ていただけだったけど、予想以上にそれは居心地の良いものだと思ってたらしい。
そしてこちらは非常にらしいと思うが今を満ち足りる
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