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戦国異伝
第百二十話  出雲の阿国その四

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「会って話をしてみたいのう」
「阿国とですか」
「そうされたいのですか」
「うむ、そう思う」
 こう十勇士達に対して言う。
「どう思うか、それで」
「悪くありませんな」
 まずは霧隠が思慮する顔で答えた。
「殿にとってそれは決して悪い出会いではありませぬ」
「ふむ、悪くないか」
「はい、殿はこれからもさらに雄飛される方」
 そしてその雄飛はどういったものかというと。
「天下第一の武士となられる方ですから」
「人と会うことは悪くないというのだな」
「特に。それがしの見立てですが」
 こう前置きしての言葉だった。
「阿国殿もまたかなりの方です」
「女傑というか」
「武芸やそうしたことではなく」
「人としてじゃな」
「はい、女傑です」
 阿国はそうした女だというのだ。
「かなりの資質の方かと」
「その者と会ってか」
「殿は多くのことを身に着けられるべきです」
「わしの為でもあるか」
「それに会って退屈することもありますまい」
 霧隠はこのことも指摘した。
「楽しい思いをされるでしょう」
「そうした意味でもよいか」
「よいかと」
「わかった、では行こう」
 阿国のところにだというのだ。
「今からそうしてくる」
「では我等はここで待っています」
「酒でも飲んで」
 十勇士達は明るい笑顔で幸村を見送りその間は彼等で楽しむというのだ。
「そして殿が戻られれば共に飲みましょうぞ」
「阿国殿の話を肴にして」
「ほう、河原で飲むか」
 幸村も彼等の話に乗り笑顔で応える。
「よいな、晴れておるしな」
「今日もしこたま飲みましょうぞ」
「心ゆくまで」
「うむ、では話の後でな」 
 幸村は明るく笑ってそのうえで一旦十勇士達と別れた、そのうえで橋の下にあった楽屋を訪れた、すぐに女達が彼を呼び止めた。
「えらく格好のいいお武家様どうしたんだい?」
「へえ、赤い着物に袴ね」
「織田家の青とはまた違う服だけれど似合うね」
「今夜あたし達と飲まない?」
「いや、飲むのは家臣達と約束をしている」
 幸村は艶やかな女達に囲まれても生真面目に返す。
「悪いが御主達と共に飲むことはできん」
「あら、じゃあ遊ぶこともしないんだね」
「何かこの人朴念仁みたいだね」
「これはまた残念だね」
「折角格好いいってのに」
「格好いいと言われて悪い気はせぬが今はそれよりもじゃ」 
 幸村は彼の生真面目過ぎる態度に残念がる女達にさらに言う。
「阿国殿に会いたいのだが」
「へえ、阿国さんに会いたい」
「それでどうしたいっていうのかな」
「話をしたい。共にな」
 こうありのまま答える。
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