第百二十話 出雲の阿国その二
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「どうも」
「うむ、わしもそう思う」
信濃、そして甲斐から見ての言葉だ。奇しくも信長と同じことを言っているが彼等にその自覚はない。気付かないまま言っている。
「どうもな」
「料理以外はいいですな」
霧隠はそれはそれとした。
「栄えていますし。色々な遊びもありますし」
「何か女がいるとか」
女のことを言ったのは持月だった。
「芸をするとか」
「ほう、女か」
「名前を阿国とかいいました」
その名前もここで語られる。
「出雲の出、出雲の阿国というそうです」
「この都におるのじゃな」
「何でも相当派手だとか」
「傾奇者か、女の」
幸村は最初はこう考えた。
「そうなのか」
「そうやも知れませぬな」
持月もそのことを否定しない。
「踊り芝居をするとか」
「ふうむ、芝居とな」
「大層奇麗なおなごだとか」
「奇麗かどうかはともかく面白そうじゃな」
これが幸村の考えだった。
「一度見てみるか」
「ではそこに行かれますか」
根津が問う。
「今から」
「そうだな、言ってみるか」
幸村も根津のその提案に乗る、そしてだった。
己の後ろに護る様にして控えている十勇士達に向き直ってその上で笑顔で言った。
「では今から阿国に会おう」
「はい、それでは」
根津が応えそしてその阿国がいる場所に向かった、そこは都の河原だった。
そこに人が集まっていた、彼等は口々に言っていた。
「やっぱりいいよな」
「ああ、凄い別嬪さんだな」
「あれが歌舞伎か」
「出雲の阿国なんだな」
「歌舞伎というか」
幸村はまずこの言葉に反応を見せた。
「傾奇ではなく」
「その様ですな」
「今確かにそう言いましたな」
十勇士達も言葉の発音、歌舞伎と傾奇のその微妙な違いに気付いた、都の方の言葉の中のその違いに気付いたのだ。
「歌舞伎と」
「そう言いましたが」
「おそらく傾奇から出たものであろう」
幸村はこのことはすぐに察した。
「だから歌舞伎なのだ」
「しかし傾奇とはまた違う」
「そうなのですね」
「うむ、そうであろうな」
こう予想を立てて言う。
「それが一体どういうものか」
「この人だかりの向こうにありますか」
見れば人はかなり多く彼等が今いる場所からは舞台は見られない、それで彼等は一旦その人だかりの中に入ることにした。
「済まぬな」
「少し通してくれ」
こう断りながら中を進んでだった。
彼等はその中に入った、そして目の前の舞台を見ると。
傾奇者の格好、しかも普通のそれ以上に脚や胸が露わになった服を着て派手な化粧をした艶やかな女達が歌い舞って芝居をしていた、それを見てまずは三好清海が言った。
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