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なりたくないけどチートな勇者
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せんナルミ様!この娘が不手際を…」

「いや違うって。」

だめだこりゃ。


**********☆


「ナルミ様、お食事のご用意ができました。」

そう言って登場したのはセブルさん。
準備ができたらしく、もうみんな揃っているから迎えにきたとか。
ただ、なんか雰囲気が怖い。

そして彼に部屋まで案内されている途中に、お礼の言葉をのべた。

「ありがとうございます。」

「…………いえ、仕事ですので。」

自分がお礼をセブルさんに言うと、彼は一瞬の間を開けて返事をした。
あれか、平民にも気を使う貴族ってイメージか。
なんとテンプレートな。

そう自分が思いながら部屋に案内されてると、彼は目に見えて警戒しながら自分に言った。

「なるほど、まずは私達使用人から好感を得てランドルフ家に近付こうと言う気ですね。うまくいけばこの家の内情も聞けますからね。」

………はい?

「…どんな考えですか。」

「こんな考えです。」

……なんか、怖いこの人。
めっちゃ敵対心剥き出しなんですが。

「………なんか自分、怒らせる事しました?」

勇気を振り絞り、思い切って聞いてみた。
すると、セブルさんは静かに

「…私はお嬢様を、シルバお嬢様が小さな頃から私がお世話をして、手塩にかけて育ててきました。それを……」

そう言って彼は自分に向き合い、話しだした。

なんか展開が読める気がする。

「ぽっと出の若造なんぞに盗られる事が私は許せ無いのです。いくら人間で英雄だとしても、私はお嬢様が不幸になるような相手に嫁ぐのは我慢なりません。まだあなたがどんな方かは噂しか知りませんので、これからしっかりお嬢様に見合う者かを私が責任を持って見極めさせていただきます。」

そう一気に言い放ち、それから一瞬の間の後はっとした表情になった。
そして、彼は影をみせながら呟くように再び話しはじめた。

「……お嬢様があそこまで嬉しそうに語る姿から察するに、あなたは事実素晴らしいお方なのでしょう。しかし正直、会った事も無い者に長年育ててきたお嬢様が心を奪われると思うと、何かやり切れ無い感情が込み上げてくるのです。それでつい、その気持ちをナルミ様にぶつけてしまい……不快な思いをさせてしまい、申し訳ございませんでした。」

そう言って深々と頭を下げるセブルさん。

……親だ。
ここに娘を思う父親がいる。

「……頭をあげて下さい。別に不快には感じていないです。」

とりあえず、セブルさんのシルバちゃんに対する愛情の深さはわかった。
痛いほどに。

ただ、シルバちゃんが自分をそーゆー対象に見てるとゆー勘違いはどうなんだろ。

嫌われど、好かれる要素が自分には全く無い。
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