暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
SAO
〜絶望と悲哀の小夜曲〜
終焉
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そこまでどうにか言えて、ほっとしたのも束の間。こつん、とマイが額に小さな拳をぶつけた。

「いいんだよ、バカ」

そう言ってマイはレンの手を握り、部屋にあるテラスへと誘う。

後ろでは穏やかに微笑を続けるカグラが。

「わあぁ………!」

歓声を上げる。外は絶景だった。

まず、空が見えた。

当たり前のようだが、実はアインクラッドでは空と言うものを目にする機会が異様に少ない。あるのは、ボス戦を終えた後に次層へと続く外階段を登る時くらいなものだ。それすらも、鋼鉄の魔城の側面に遮られて半分くらいしか見ることが叶わない。

おそらく、二年ぶりに見た全天の空は、燃えるような夕焼けだった。

どこまでも続くような夕焼け空。

鮮やかな朱色から血のような赤、深い紫に至るグラデーションを見せて無限の空が果てしなく続いている。

微かに風の音がする。

その風の音に混じった、微かな───

崩壊音。

それだけで、レンは今現在の状況の大体が解かった。解かってしまった。

体の中を満たすのは、とうとうこの時が来てしまったのかと言う諦観の念。訳もなく高まっていた体温が、内側からすぅーっと冷たくなっていく。

「………そっか。とうとう……終わっちゃったんだね」

レンが呟いたその言葉に、背後のカグラが沈痛そうにその端正な顔を歪め、ゆっくりとレンとマイ、二人の前に跪く。

「お二人と共に過ごせた数週間、とても幸せでした。私、カグラ、本日を持って任を返させて頂き、永遠の暇を頂戴いたします」

日本刀のような鋭さがあったその声に、もう鋭さなど欠片もなかった。

あるのはただ、別れるのが辛いと言う一人の悲しみの声。

だからレンは、その声に穏やかに笑って返した。

「うん。ありがとう、カグラねーちゃん。今まで一緒に過ごせて、楽しかった」

きらり、と、深く下げたカグラの顔から水滴が零れ落ちる。

それは宝石のような美しさで、しかし流れ星のようにあっさりと床に落ちて消える。

「ありがとう……ございました…………」

パシャアアァーン!

言い切ったカグラの体が、ポリゴンの欠片となって四散した。それをどこか悲しげに見ながら、マイはポツリと言う。

「ありがとう」










外に出たい、と言うマイに連れられて外に出たレンは、今出てきた建物を振り仰いだ。

巨大だ。果てしなく巨大だ。

華麗な尖塔を持った巨大な真紅の宮殿。ゲームが予定通り進行すれば、攻略組プレイヤー達はあそこで魔王ヒースクリフと剣を交えることになっていたのだろう。

その巨大な宮殿を、レンとマイは二人してしばらく見つめていた。

柔らかな晩秋の風に混じる、崩
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