第三話「四様料理」
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でこれを食べるの? という意味を視線に込めて恐る恐る訪ねるが、何を思ったのかアストレアは――、
「――えいっ」
ぶすっという音とともに二本の箸を魚に突き刺した。
言葉もないとはまさにこのことか。突き刺した箸がとどめとなり、それまで元気にピチピチと跳ねていた魚は二度と尾ひれを動かすことはなかった。
「お箸がないと食べれませんよね。さあ、どうぞ!」
ぐいっとぐいっと、と煽るエンジェロイドに嘆息する。ある意味、期待通りというかなんというか……。
「……タナトス」
「はい、ご主人様。アストレアちゃんはこっちに来ましょうね〜」
「ええっ!? ちょ、なんで引っ張るんですかタナトス先輩! ああ! イカロス先輩もなんでご飯下げるんです!? 助けてください、マスター!」
マ〜ス〜タ〜、とドップラー効果を残しながら部屋の外へ連れていかれるアストレア。タナトスの説教は恐ろしいからな、南無……。
イカロスに食器を下げてもらい食後のお茶を啜っていると、ニマニマしたハーピー妹が姉の背中を押してやって来た。
「どうでしたか、マスター?」
「うん、一部はアレだったけど、みんな初めてにしては良い出来だったよ。美味しかった」
「そうですか。イカロスたちも喜んでいますよ。それはそうと、実はマスターにはまだ召し上がっていただいていない料理があるんです」
「おい、まさか……!」
それまで一言も口を開くことがなかったハーピー姉が焦燥を露にして勢いよく振り返った。口許を緩ませた妹はどこからともなくクロッシュが被された料理を取り出した。本当にどこから取り出した?
「実は姉さんも作ったんですよ〜。マスターのためにね」
「きゃぁ――!」
顔を真っ赤にして奇声を上げたハーピー姉が自身が作ったという料理を取り上げようと手を伸ばすが、背後に回りこんだ妹に羽交い締めにされて身動きが取れずにいた。
「――っ! リリー、お前……っ!」
「いいじゃない。節介作ったんだから、マスターに食べてもらおうよ。さっ、マスター、召し上がっちゃってください!」
「ん、じゃあ節介だし、いただきますかね」
ハーピー妹に促されてクロッシュを外す。ちなみにハーピー妹の愛称はリリアだ。姉の方はミリアである。なぜこのような愛称になったかは未だ解明されていない。気が付けばこの名前で定着していたのだ。
「あぁ……」
項垂れるハーピー姉を尻目に彼女の料理をマジマジと眺めた。
「これは、おにぎり?」
そう、彼女の料理は二個のおにぎり。三角形ではなく歪な円形のそれは白米を海苔で包み、
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