第三話「四様料理」
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「次は誰かな?」
布巾で口元を拭き、水で口直しをしてから皆を見回す。
「私……」
ずずいっと前に出たのはイカロスだった。自分の作った料理を俺の前に持ってくる。
「おおっ!」
イカロスの料理は肉じゃがだ。俺の胃袋を配慮したのかお子様サイズの分量なのがまた心憎い。
こっちの世界に来てからはもうお目にかかれないと思っていた料理のため、知らず知らずのうちに感嘆の息が溢れた。
「マスターの好物を用意しました……」
「よく知ってるな」
そう。なにを隠そう肉じゃがは俺の好物の一つである。
「へー、マスターって肉じゃがが好きなんだー」
「あら、知らなかったの? 私が肉じゃがを作って差し上げると喜んで召し上がっていたじゃない」
「いやー、単純にタナトス姉さんの料理だったからだと」
「まあ、お上手ね。うふふ、それだと光栄だけど。他にもカレーライスやハンバーグがお好きだから今度作って差し上げたら?」
「それいいかも! あ、でもわたし、料理には自信がないから今度教えてくれる?」
「ええ、もちろん。イカロスちゃんにだけ教えたら不公平だものね」
タナトスとハーピー妹がキャイキャイとガールズトークで華を咲かせる。というか、人の個人情報をそう易々と開示しないでほしいんですけど。
カレーライスやハンバーグが好きなのは事実だ。子供っぽい嗜好をしているとは自分でも思うが、美味しいものは美味しいんだもの!
「では、いただきます」
気を取り直して添えられた箸を手に肉じゃがを口に運んだ。隣でジーっと見つめてくる二つの目を極力頭の片隅から追い出して味わうように咀嚼する。
(懐かしい味だ……記憶にあるものとは全然似ても似つかないのに、それでもある種の懐かしさを感じる……。これが、お袋の味ってやつなのかな?)
少し濃い目の味付けだがくどくはない。ジャガイモは荷崩れすることなく、しっかりとした歯応えを残している。
俺は料理評論家ではないから詳しいコメントはできないが、一言で言い表すなら――、
「美味いっ!」
これしかないだろう。
「ありがとうございます、マスター」
箸が進む進む。これで白いご飯もあればベストだな。
瞬く間に平らげ、ご馳走様でしたと手を合わせた。
「いやー、美味かったよ。タナトスに教えてもらったとはいえ……料理は初めてだよな?」
「はい。調理技巧プログラムおよびレシピも一通りプログラムされていますが、実際に料理を行ったのは今回が初めてです」
「そっか。どうだった? 実際にや
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