第三話「四様料理」
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るが節介作ってくれたんだ。この好意を無駄にしたくない。
「それじゃあ頂こうかな。まずはニンフのから……」
クロッシュを退かしてニンフの料理と対面する。
ニンフの料理は卵焼きだ。一口サイズに切り分けられたそれらは形が多少崩れて所々焦げたところもあるが、一生懸命作ってくれたのだとよく分かる。
いかにも、始めて作りました風な料理だ。
「いただきます」
固唾を呑んで見守るニンフたちを尻目に早速卵焼きを口に運ぶ。ゴクリッ、と誰かの息を飲んだ音がやけに大きく聞こえた。
とくに反応を示すことなく黙々と味わって咀嚼する。すべて平らげると痺れを切らせたニンフが恐る恐る訪ねてきた。
「ど、どうですか、マスター……?」
判決を待つ被告人のような不安を募らせた表情でこちらを見上げるニンフ。一瞬、賛辞の言葉を述べようと口を開いたが、思い留まった。
(ニンフのことを想うならここは正直に言った方がいいかも……。下手な遠慮は反って相手を傷つけることになりかねない)
やはりここは正直に言おうと、心を鬼にして正当な評価を下した。
「ニンフ、ここに持ってくる前にちゃんと味見した?」
「えっ? いえ、してませんけど。マスターに最初に食べてほしかったから……」
俺の厳しい顔を見てさらに不安になったのか、意気消沈して俯く。不安の表れか、最後の方の言葉は今にも消えそうな小さな声だった。
「塩の入れすぎで辛い。火加減も誤ったみたいだね、外が焦げていて中まで火が通っていない。それに変な味がするんだけど、何か入れたでしょ?」
「……最近、マスター研究室に籠ってばかりだったから、元気になるように栄養ドリンクを……」
その言葉に思わず嘆息した。料理に疎い人が陥る典型的なパターンだな。
ビクッと震えるニンフを横目に言葉を続ける。
「その気配りは嬉しいけれど、それは入れちゃいけないでしょ。人に料理を食べてもらうのなら最低限のマナーとして味見はしなさい。もしニンフの料理で俺が倒れたらどうする?」
「それは……」
俺が言いたいことを理解できたのか目尻に涙を浮かべ俯く。
「まあ、ちょっときつく言い過ぎたかもしれないけど、これもニンフを想ってのことだから誤解しないでよ?」
ちょいちょいと手招きしてニンフを側に来させると頭を撫でた。
「ニンフの俺を喜ばせたいっていう気持ちはよく伝わったよ、ありがとうな。次を期待しているから、また作ってくれよ?」
「は、はい!」
泣いた鳥のなんとやら。それまで意気消沈していたニンフはぱあっと顔を輝かせた。
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