裏通りの鍛冶師
とあるβテスター、絡まれる
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片手で弄びながら、なるべく不気味に聞こえるように声を作る。
このフレーズを口にした瞬間、何故か豆と柴犬が脳裏を過ぎったけれど、今は関係ないので余計な思考をカット。
「SAOのシステムって、意外と穴だらけなんだよね」
「は?オマエ、何言って───」
「だから、例え圏内であっても……人を殺す方法なんて、少し探せばいくらでも見つかるんだ。例えばこんな風に──ねッ!!」
言い終えたのと同時、短剣を構えてリーダーに向かって全力で駆け出した。
短剣 中級突進技《ラピッド・バイト》 ───の、構えだけをとりながら。
「なに!?」
ここは圏内で、尚且つソードスキルすら発動させていないため、僕の攻撃が当たったところでダメージもノックバックも発生しない。
それでもリーダーは、猛進する僕に対して怯んだ様子を見せた。
僕が『圏内でも人を殺せる』と告げたことによって、頭ではありえないと思いつつも、身体が勝手に反応してしまったのだろう。
「はあッ!!」
「っ!?」
僕は一際大きな声を上げながら、手に持っていた短剣をリーダーの顔目掛けて投げつけた。
投剣スキルでも何でもない、本当に“投げただけ”の、なんともお粗末な一撃。
僕の動きを警戒していたリーダーは反射的に両腕で顔を庇い、短剣は彼に当たる寸前のところでシステムの障壁に遮られ、甲高い金属音と共に弾かれた。
「なんてね」
その隙に、僕は無防備となったリーダーに攻撃───はせずに、彼の足と足の間をスライディングで潜り抜けた。
ただでさえ大柄な上、見事な仁王立ちをしていたリーダーの両足間の幅は、小柄な僕が潜り抜けるには十分なスペースがあった。
そのまま彼らに背を向け、敏捷値にものを言わせた全力疾走で裏通りを駆ける。
「──っ!!テメエ、ふざけんじゃねぇぞッ!!」
背後からリーダーの怒号が聞こえてくるけど、無視無視。
僕は最初から戦うつもりなんて毛頭なかったわけで(そもそも圏内じゃ無理だし)、彼らを騙したことに対して責められる謂れはない。
走りながらメニューを開き、スキルMod《クイックチェンジ》のショートカットアイコンを選択。
しゅわっ!という控えめな効果音と共に、放り投げた短剣が僕の手の中へと戻った。
Mod(Modify)とは、各種武器スキルを一定値上げる毎に取得チャンスを得られる、簡単に言えばスキルの拡張オプションようなものだ。
《ソードスキル冷却時間短縮》《クリティカル率上昇》《毒耐性10%》などの常時発動型のものや、《クイックチェンジ》のように任意で発動させる必要のあるものまで、多種多様なスキルModが存在している。
この《クイックチェンジ》はほとんどの片手武器で初期から習得できるアクティブModで、ショートカットアイコンから発動させることで
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