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スペードの女王
第三幕その五
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し。伯爵夫人は彼にまた言ってきた。
「そうなる。甘美な破滅に」
「甘美な破滅・・・・・・」
「リーザはここにいるわ」
 伯爵夫人はゲルマンに対して囁いてきた。
「リーザが?」
「そうよ。それだけは伝えておいたわ。それじゃあ」
 伯爵夫人は姿を消した。場は元に戻った。
 ゲルマンはその中でふらふらと立ち上がった。赤い目の光は消え空虚なものとなっていた。
「リーザ・・・・・・そこにいるのか」
 そして恋人の名を呟いた。遂に。
「なら・・・・・・僕はそこに行こう。君の側で安らかな死を」
「あっ!」
「ゲルマン!」
 懐からナイフを取り出し胸に刺した。赤い血の海の中崩れ落ちた。
 ゲルマンは甘美な破滅を迎えその場に崩れ落ちた。その周りにはトランプのカードが舞い降り彼の亡骸を覆った。誰も何も言えなかった。ただその破滅を見届けただけであった。


スペードの女王   完



               2006・10・20

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