第一物語・後半-日来独立編-
第二十七章 目指す場所へ《3》
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だけだ。いいか、我ら黄森は神州瑞穂の頂点。頂点は絶対で無ければならない。俺達の後輩達は日来に負ける程柔ではない!」
諦めるわけにはいかない。
力無き神州瑞穂は黄森により強化され、他国と対等の地位を得た。
自分勝手に動く日来は今の地位を揺れ動かす危険な存在でしかない。そんな者達に自分達は負けてはならない。
悔しさを隠し、辰ノ大花にいる仲間へこちらによる日来の阻止不可の連絡を飛ばした。
●
黄森の戦闘艦による砲撃が止んだ。
先程まで鼓膜を打ち付けるような音が連発していたが、今は加速機の音と大気の流れによって生み出された風が通る音が聞こえるだけだ。
静かな今が嘘のように感じられた。
皆が落ち着く頃、“日来”が口を開く。
『目的地・辰ノ大花、移動時間不明。各船の機械人形は、担当の船の管理を怠らないようお願い致します』
一拍置いて、
『日来は速度に乗ったと判断出来ます。各船、加速機を噴かせ速度上昇に努めて下さい』
連結して日来をつくる八船は加速機の動きを上げ、海を渡るかのように流魔の波を起こした。
日来は前へ、波は後ろへ。斜め上に全体を傾けさせ、切れ目のなかへとその巨体を入れる。
加速する日来は切り目へと吸い込まれるように、黒の空間へと消えていく。
巨大な日来の全体が消えるのにそう時間が掛からなかった。切れ目から日来が消えるにつれ、切れ目はその口を閉じて現実空間から日来を切り離した。
かつて日来と呼ばれた地には巨体な穴が一つあるだけで、地上には何も残ってはいない。
その上空には幾つもの戦闘艦が寂しく、加速機の音を奏でているだけだった。
●
遠い未来。そこは何時からか“始まりと終わりの湖”と呼ばれ、神葬世界に奇跡と喪失をもたらした存在がいたとされる。
その名は日来。
その名は日が来訪する場所。
その名は片腕無しの宿り主。
彼の、彼らの行動が世界の歯車を動かし、後の世に彼らの行動は伝説として語られる。
その伝説は世界を変えるために生涯を捧げた一人の学勢による、奇跡と喪失の物語である。
●
暗黒の空間を見渡す片腕の無い少年、セーランは闇を照らす照明の明かりを受けながら仲間の元へと歩く。
コンクリートの地面を打ち付ける音が鳴り、その場にいた者達は音の鳴る方へと身体を向ける。
「逃げ切れたみたいだな」
「そうですわね。ですが今までのは序章に過ぎませんわ、本番はこれから」
「……本当に動き出すんだな」
改めて飛豊は思ったことを口に出す。
加速機の音は聞こえるが、風の動きが感じられない摩訶不思議な空間のなかでそう改めて思った。
日来を守るため独立させること、そしてその後に世界を相手に崩壊進行を食い止めることを。
不安が感じられるその言葉
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