立志の章
第6話 「逃げても殺す」
[4/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
男は歯軋りをしながらその光景を見る。
(だけど、あんな……あんな……)
そこには自分の配下、その中から集めた直衛である二千人。
それが――
「あんな化け物がいるなんて、きいてねぇえええええええっ!」
たった一人の男によって打ち倒されていた。
―― 盾二 side ――
突進した俺は、AMスーツの力を全開にして突っ込む。
賊は牽制に矢を放ってくるが、そんなものがAMスーツに効くわけがない。
何しろこのスーツは、防刃・防弾で戦車砲でもなけりゃその衝撃さえ吸収してしまう。
精神感応金属オリハルコンは、AMスーツ内部に衝撃と加重を受け止めるパワーフィールドを形成している。
それは装着者のパワーで振り回される肉体をも保護する機能がある。
だから常人の三十倍以上のパワーを出したとしても、肉体のダメージはほとんどない。
ただし体重が変わるわけではないから、パワーに振り回されるとバランスを崩しやすい。
ゆえに中国拳法の技法を使い、足を踏ん張りつつ、大地で反動を受け止める。
そうしないと反力で、自分の身体が吹き飛ばされるからだ。
その為、攻撃もジャブや弱いボディブロー並の力しか入れていない。
しかし、それを『AMスーツの力』が三十倍まで高めてくれるのだ。
ヘビィボクサーの渾身のストレートがジャブのスピードで飛んでくる――そんな風になる。
「本来は死にたくなければ動くな、というんだがな……お前らには言わんよ」
ただし、それも殺さない程度に力を弱めた状態であれば、だ。
目の前にある賊の顔。
そこに軽く一発殴ると頭蓋が割れ、目玉が飛び出る。
ジャブも少し力を増せば、簡単に人を殺せる殺人パンチになる。
「悪いがお前らを生かしておく気はない! ここは向こう(元の世界)とは違う! 司法の裁きなどはない! ゆえに傭兵のやり方で始末させてもらう!」
アーカムは基本不殺だが、俺は十二まで傭兵部隊で生きてきた。どこぞの殺戮兵器といわれた先輩と違い、自分の意思で、だ。
だから殺すべきものを殺すのに躊躇はない。
(それでもお前なら、きっと殺さずにすむようにするのかもな……一刀)
賊の首を、腰から抜いたオリハルコンのナイフで切り裂きながら、そう思い耽る。
俺よりも脆くも優しい兄――一刀ならば、きっとそうしそうな気がする。
「ヤロウ!」
賊が五人がかりで斬り付けてくる。
頭部への一撃を左腕で防ぎつつ、他のは防御すらせずに右腕と両足で同時に三人を始末する。
「は、刃が!?」
賊の一人が自分の剣を見て驚愕する。
だが、一瞬で身体を回転させた俺の回し蹴りを首に喰らい、
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ