立志の章
第6話 「逃げても殺す」
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は側面から敵を叩こうとしている。
でも私は、そう指示しながら――盾二さんしか見ていなかった。
―― 白蓮 side ――
「あの獣どもを生かして返すな!」
私の怒号に兵が動く。
賊も、こちらに気づいて統制が取れないまでも一丸となって向かってくるようだ。
だがこちらは曲がりなりにも正規兵。ただの野盗ごときに後れを取るわけはない。
「我が名は『白馬長史』公孫賛! 我が騎馬の冴えを見るがいい!」
私の号令と共に、騎馬隊五百が賊の本隊の一部を強襲する。
だが敵は槍を並べ、進行方向に矢を放ち、こちらの騎馬隊の機動力を封じようとしてくる。
「ええい、なにをやってるんだ!」
と、私が苛立った声を上げたが。
「伝令! 右翼の趙雲様から足止めされていた敵を排除したとのこと!」
「よし、このまま星に側面を……」
「こ、公孫賛様! 左翼から――」
「なにいっ!?」
見ると左翼の敵の一部が、こちらの側面に向かって突進してこようとする。
「くっ、桃香たちはなにを――」
私がそう叫ぼうとしたとき、伝令が声を上げた。
「い、いえ、違います! 左翼の敵はこちらに攻撃をしてきたわけじゃありません!」
「なに?」
「相手は……逃げてきているんです!」
「なんだってぇ!?」
私が素っ頓狂な声を上げた、まさにその時。
こちらに向かってきていた左翼の敵陣に、突如現れた爆発的な竜巻が砂塵を巻き起こした。
「な、んんだー!?」
私は危うく落馬しそうになりながら、その爆風に耐える。
「こ、公孫賛様! あ、あれを!」
「なにが……!?」
風が収まり、伝令の指差す先に視線を向ける。そこには――
一人の黒い『魔人』が立っていた。
―― other side ――
(信じられねぇ、信じられるわけがねぇ!)
男はこの一帯を束ねる賊の頭領だった。
男の率いる数は五千を越え、周辺に並ぶものなしといわれるほどに成長している。
(このまま街の一つでも占拠して、太守にでも成り上がってやる――)
男のひそかな野望がもうすぐ結実すると思っていた。今日までは。
(例のやつらからの接触もあった。うまくすりゃこの地方を俺の思うが侭にすることも夢じゃねぇはずだった……)
公孫賛とかいう都の太守。噂じゃ趙だかいう武将さえ気を付けりゃ問題ない、と聞いていた。
だから一部隊でその武将だけを切り離して、その間に直衛のやつらによる側面からの攻撃で太守を殺し、囲んで武将も殺すはずだった。
(足止めも成功してうまくいくはずだった……そう、うまくいくはずだったんだ!)
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