立志の章
第6話 「逃げても殺す」
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前方、六里(三km)にある邑が現在襲われている、と伝令さんから伝えられた私達。
急いで向かうと邑で略奪を終え、すでに終結している賊の姿がありました。
「おのれ……」
誰かの怨嗟の声が聞こえました。
炎と煙、焼け焦げた人と家の匂いが周辺に充満しています。
その光景に私はぎゅっ、と胸の痛みをこらえ唇を噛みました。
「数はおよそ五千……公孫賛様は攻撃を開始するそうです」
「わかりました。私たちも追随します!」
「はっ、では!」
伝令さんは急いで戻っていきました。
「ご主人様!」
「ご主人様!」
「お兄ちゃん!」
私たちが盾二さんを振り返る。
そこには――怒りに目を燃やす盾二さんの姿があった。
「今回は討伐だ……俺が軍を率いても攻勢じゃたかが知れている。軍は愛紗と鈴々が隊を二つに分けて率いてくれ」
「え……? ご主人様は?」
「俺か? 俺は……そういや、まだ君たちに俺の力をちゃんと見せてなかったよな」
力……あの炎の業のこと?
「俺の力の本分は……パワー!」
バキッ!
「きゃっ!」
「なっ!?」
「わわっ!」
盾二さんが叫んだ瞬間、その身体が一回り大きくなった感じがしました。
筋肉が盛り上がり、異様な雰囲気があふれ出します。
「わわわ、こ、こないだと同じなのだ!」
「なんという氣……これが盾二殿の本来の力か」
鈴々ちゃんの声が震え、愛紗ちゃんが呻く。
私には氣とかわかんないけど……なにか怖いのがわかる。
「この世界で俺を傷つけられるのはそうはいない……だから、いってくる」
え?
「ご、ご主人様?」
「お兄ちゃん、どこ行くのだ?」
「決まってるだろ……」
盾二さんはそう呟き――
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」
まるで地獄の泰山府君の怒号のような咆哮が、辺り一帯に響き渡る。
その咆哮が収まる間もなく、盾二さんの姿がふっと掻き消えた。
「え、どこ?」
「早いっ!」
「あそこなのだ!」
私が盾二さんを見失うも、愛紗ちゃんと鈴々ちゃんには見えたみたい。
そこに馬よりも早く走る盾二さんの姿があった。
「はっ、と、桃香様! 私たちも続きましょう! ご主人様をお守りするんです!」
「あ、そう、そうだね! 皆さん、突撃です! 愛紗ちゃん、鈴々ちゃん、お願い!」
「まかせろなのだ! みんな、部隊を半分に分け、片方は鈴々に続くのだ! 愛紗、鈴々は側面から行くのだ! お兄ちゃんは愛紗が助けるのだ!」
「わかった! 片方は私に続け! ご主人様をお守りする! 突撃ーっ!」
愛紗ちゃんが突撃し、鈴々ちゃん
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