立志の章
第5話 「ナ、ナニヲイッテイルノカナ、アイシャサン」
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ご主人様」
「な、なにぃっ!?」
驚いたのだ! 愛紗がお兄ちゃんにご主人様って言ったのだ!
「ナ、ナニヲイッテイルノカナ、アイシャサン」
「あの軍略に知識、そして武。そしてその志。私も桃香様と同意見です。私たちがお仕えするにふさわしい方かと」
「だよね、だよね! さっすが愛紗ちゃん!」
「………………ぇ?」
お兄ちゃんが固まっているのだ。
「ええ〜……り、鈴々はどうかな? やっぱ、俺が主人なんて悪い冗談だよね……?」
お兄ちゃんが、汗をダラダラと流しながら鈴々に尋ねてくるのだ。
でも、鈴々もそう思うのだ。
「そんなことないのだ。お兄ちゃんは鈴々を『強い将になれる』って言ってくれたのだ! お兄ちゃんが主になってくれるなら、鈴々はもっと強い将になれるのだ!」
「えぇぇ〜……」
お兄ちゃんが「お前もか」というような目で見てくるのだ。
「はっはっは……男冥利につきますな、盾二殿。これだけの美少女に慕われて、まさか嫌とは言いますまい」
「せ〜い〜、人事だと思って気楽に……」
「実際、『ヒトゴト』ですからな」
お兄ちゃんは口をパクパクと開いたり閉じたりした後、かくん、と項垂れたのだ。
「そういうことでよろしくね、ご主人様!」
「アーソノコトハ……トリアエズカエッテカラデ、イイデスカネ」
「諦めろ、盾二……桃香はこう、と決めたら梃子でも動かん」
「トホホ……」
白蓮お姉ちゃんが、お兄ちゃんの肩に手を置いて慰めているのだ。
「さ、じゃあ賊の討伐、ガンバろー!」
「「「おー!」」」
桃香お姉ちゃんの言葉に、お兄ちゃん以外が声を合わせたのだ。
そのお兄ちゃんは――
「ちくしょーーーっ! 賊に八つ当たりしてやるーーーーっ!」
なんか一人で吼えていたのだ。
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