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ヴァレンタインから一週間
第17話 西宮の休日?
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席から五歩ほど進んだ後、

「本当に、世界は不思議で溢れているモンなんやで」

 俺は、背中の先に居るはずの少女に聞こえるか、聞こえないかの微妙なボリュームでそう独り言を呟く。

 その瞬間に、周囲の雰囲気が変わった。
 図書館らしい静寂に包まれた空間で有りながらも、人の動く静かな音。微かに聞こえる空調の発する低音。そして、誰かが本を閉じる微かな物音が復活する。

 そう。それまでは、ハルヒの声と俺の声以外存在しなかった閉じられた世界から、急に現実感を伴った世界への帰還を果たしたかのような奇妙な違和感。

「あんたって、時々意味不明な事を言い出すわね」

 そんな、立ち止まった俺の背中に対して声を掛けて来るハルヒ。どうやら、一時的な失調からは回復はしたような雰囲気。少なくとも、先ほどまでの挙動不審な様子は納まったようです。
 ただ、おそらくは、先ほどの不思議と言う言葉に過剰に反応しただけでしょうが。

 それにしても……。

「今、この図書館でも、後で考えたら少し不思議だと思う事が起きていた。その事に俺は気付いて、美人の姉ちゃんは気付かなかった。ただ、それだけ」

 少し振り返ってから、最初のように挑むような強い瞳で俺を見つめて居る少女に対して、そう話し掛ける俺。
 そう。彼女の声のボリュームで、図書館内での会話を続ける事は流石に問題が有ると思いましたから、自らの周りにシルフの音声結界を施して置いた。
 ……そう言う事。

 もっとも、そんな細かい俺の気配りのような物に、彼女が気付く事は無かったようですけどね。
 まして、彼女と俺の居る空間内には、昨日と同じように他の図書館への来館者が近付いて来る事は無かったので、声の大きさに関しては気にする必要は初めから無かったようなのですが。

 そして、ほんの少しの空白。その空白の間、少女の瞳にほんの少しの逡巡に似た色が浮かぶ。
 そうして、

「ねぇ」

 それまでの挑むような視線から、少し探るような視線を俺に向けながら、

「明日の予定は?」

 ……と問い掛けて来た。それまでの、雰囲気と比べるとかなり消極的な雰囲気で。
 いや、こう言い直すべきですか。普段、彼女がそう装っている傲岸不遜、唯我独尊的な仮面(ペルソナ)を脱ぎ捨てて、まるで普通の少女のような雰囲気を纏って、と……。

 そして、明日の日曜の予定。当然、俺に明確な日曜の予定など存在しては居ません。しかし、彼女、涼宮ハルヒの方にも、日曜日に付き合う相手が……。
 まして、俺相手に、そんな仮面を脱ぎ捨てるようなマネをしても、大して意味はないと思うのですが。

 この出会いは、所詮は一週間にも満たない出会い。銀幕の向こう側で、王女と新聞記者が共にした一昼夜と同じ物。
 この
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