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ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 前編
偽善の持つ優しさ
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らない。
 マサキはもう一度頭の中で思いついた方法を反復すると、未だ顔を伏せたままのキリトに声を飛ばした。

「キリト、お前はいつからこれをやってる?」
「え? ええと、三日前からだけど……」
「なるほど」

 この浮遊城に閉じ込められた一万人の中でもトップクラスのレベルを持っているキリトが、三日かかっても壊せないということは、この岩は《破壊不可オブジェクト》に次いだ硬さを持っていると判断していいだろう。

「となると、次は……」

 マサキはぼそりと呟くと、何を思ったか、岩に耳をくっつけてペタペタと触ったり、スイカの良し悪しを確かめる八百屋のように、コンコンと叩いたりし始めた。さらにホロウインドウを開き、左手で数式らしきものを書き込んでいる。それを見たトウマが声をかけようとするが、「恐らく岩質は基本的な安山岩……となると構造は……」等と何やらぶつぶつと呟きながら岩を触っているマサキの表情が真剣そのものだったため、断念して見守ることにする。
 やがて、数分ほど経ったとき、マサキは短く「よし」と発し、立ち上がった。そのまま岩の中心辺りに掌をかざすと、マサキの行動の真意が全く理解できていないトウマに向き直る。

「トウマ、ここだ」
「へ?」
「だから、ここ。ここ殴れ」
「え、あ、ああ……」

 そんなもの、何処を叩こうが何かが変わることはないだろうと思いつつも、せめてこの絶望感を目の前の岩にぶつけることでいくらか発散させようと、トウマはマサキが示した場所に、思い切り拳を叩きつけ――。

「「「え(エ)?」」

 トウマ、キリト、アルゴの三人が、殴られた岩を目にして、そして辺りに響き渡った、“ピシリ”という音を耳にして、目を丸くした。なんと、キリトが三日かけても割れなかった大岩に、たった一度のパンチでヒビが入ったではないか。
 一瞬、目を丸くして硬直していたトウマだったが、気を取り直すと、二発目、三発目を叩き込む。その度に岩に刻まれた裂け目は広がっていき、ヒビが入ることを示すピシリという音も段々と大きくなっていく。

「さて、キリト。お前はここだ」

 目の前の光景に目を奪われていたキリトは、マサキがいつの間にかキリトが壊すべき岩の前に移動していたことを、声をかけられて初めて理解した。トウマの岩と自分の岩とでは、システムエラーか何かの影響で硬さが全く別物なのではないか――などと、今起きたことには未だ半信半疑ながら、マサキに指示された場所に拳を打ちつける。今まで壊れる素振りも見せなかった大岩に、いとも容易く裂け目が広がっていき――。
 なんと今度は、裂け目が岩を一周し、あろうことかガラガラと音を立てて崩れてしまった。

「……ウソだろ……」
「現実だ、間違いなくな。……尤も、頬をつねったところで、痛くは
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