第四十一話 鍛えた結果その二
[8]前話 [2]次話
「だからそれだけはね」
「うん、じゃあね」
「生きてね。最後まで」
樹里の言葉はここでさらに切実なものになった。
そのうえで彼に顔を向けてだ。さらに言うのだった。
「それで戦いを終わらせてね」
「そうしないと駄目なんだね」
「絶対にね」
そうだというのだ。
「生き残ってね。本当に」
「その為にも」
「強くなってね」
「怪物と戦っていると本当に」
「強くなっていってるのね」
「しかもその怪物が強ければ強い程」
それ程だというのだ。相手が強ければだ。
「勝った時に強くなれるから」
「そうなってくのね」
「そう。だからもっと強い怪物と戦うよ」
「そうした怪物が出なかったら?」
「その時は前に出て来た怪物をね」
そうしたものをだというのだ。
「倒していくよ」
「そうするのね」
「うん。まずは戦って強くならないとね」
その為には躊躇する余裕もないというのだ。
「だからね」
「うん。それじゃあね」
こうした話をしてからだ。上城は黄金を手に入れてその殆どを寄付してから一部を手に入れた。そうしてからだった。
自宅の自分の部屋に入った時にだ。こう声に言われたのだった。
「今日倒した竜ですが」
「あの竜は何だったんですか?」
「テーバイの父カドモスが倒した竜です」
「ええと。確か」
「そうです。泉にいてカドモスの家臣を全て殺した凶暴な竜でした」
「それを僕が倒したんですか」
「強かったですね」
声は竜の強さについても問うた。
「あの竜は」
「はい、やっぱり」
強かったとだ。上城自身もこう答える。
「かなりでした」
「そうですね。あれは」
「竜ですか」
「ギリシア神話の竜ですが」
「強いですよね」
「竜は強さの象徴です」
声は言った。
「それはメソポタミアからです」
「そうなんですか」
「竜は古代メソポタミアで生まれました」
こう話す声だった。
「そしてギリシアに入りました」
「竜は中国じゃないんですか」
「中国の龍はまた別です」
字も変えて話す声だった。
「あれは川です」
「川なんですか」
「黄河。激流を具現化したものだと言われています」
「ああ、あの中国の大きな川ですね」
「黄河は中国文明を生み出した川ですが」
「確か結構激しい川でしたよね」
「度々洪水や氾濫を起こしてきました」
その治水が為政者の課題だったのだ。三皇五帝の頃よりその治水の困難さが神話となって残っている。
「その川の力をです」
「イメージしたものがですか」
「はい、中国の龍です」
そうだというのだ。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ