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第十一話 ジルのココロ
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しくシリアスなんだぜ? もっとつっこめよ」

ある程度調子を取り戻してきた様子で、ジルがよっ、と立ち上がる。

カズラは迷った。ここで自分が声をかけたとすれば、ジルにとっては逆効果になってしまうかもしれない。しかしなにも言わなければ、この少年はすべてを一人で背負い続けてしまうだろう。

そしてカズラは怒鳴った。

「逃げるな!」
「はあ?」

いきなり凄い剣幕で掴みかかってきたカズラに、ジルは困惑したように声を漏らした。

「もう逃げるのはやめてください。仲間から……それにこの世界からも。ジルは逃げすぎなんですよ。あなたが向き合わなければならなかったのは、死の恐怖なんて上等なものじゃありません。あなたは、仲間の存在から逃げてはダメなんです」
「な、なに言ってんだよ。逃げるもなにも、俺には元々仲間なんて……」
「いますよ、ここに」

そう言って、カズラは自分の胸に手を当てた。

「私はあなたの仲間です。あなたより強い、心強い仲間です。それでは不服ですか?」
「……は?」

ジルはポカンと口を開けて、カズラの顔をマジマジと見つめる。そして先ほどの言葉が本気だと悟ると、大きく肩を揺らし始めた。

「は、はは……っ、仲間……君がねぇ」

一瞬笑いそうになった表情を引き締めて、ジルはカズラの鼻の頭に指先を突きつけた。

「生意気。君が俺の仲間を名乗るだって? しかも俺より上だって?」
「ええ、そうです。自分で言うのもなんであなたよりは強いですよ?」
「アホらし……君は俺より強くなんかない。――精々が対等だろ」

するとジルはカズラの肩に手を置いて、耳元に呟いた。

「生憎、俺は君を仲間とは思ってない。君は相棒さ。俺の相棒だって認める覚悟があるのなら、背負ってやってもいいよ」
「……生意気なのはあなたのほうでは? 私は背負う側ですよ」
「違うね、俺が背負ってやるんだ。相棒の重みってヤツをね」

顔を離して、ジルが今度は肩を組んでくる。少しくすぐったくもあるが、不快ではなかった。
――むしろ、ある種の安心感のようなもの感じる。

ジルもそうだと嬉しい、と思い、カズラはその横顔を覗き込んだ。

「いいか、相棒。俺はメンドくさいよ?」
「その程度は覚悟の上です」
「……そうか。ならいいさ」

そう呟いた少年の顔は、生憎自分の横髪と彼の前髪によって隠されていた。

ジルは最後にポンとカズラの肩を叩いて、今度こそ離れていった。


「じゃあ行くか、カズラ。――次の舞台にね」


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