第十一話 ジルのココロ
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「俺はさ、そんなに強い人間じゃなかったんだ」
ポツリと呟いたジルに、カズラは隣に座り込んでいる少年に視線を向けた。
フロアボスを下した、カズラとジルを除いた攻略組は、次の層をアクティベートするために迷宮区最後の螺旋階段を上って行った。
カズラとジルが残ると聞いて数人が気にする様子を見せていたが、そんな彼らも大多数の空気を読め、と言いたげな視線に負けてあとに続いていったため、ボスの間には二人しかいない。
「このゲームが始まってから、俺はずっと逃げてきた。仲間の重みから、死の恐怖から……この世界から。それが落ち着いてきたのは半年くらい経った頃かな」
ジルの表情にはなんの変化もない。ただ淡々と事実を述べているだけに見えた。
「半年も経った頃には、俺もある程度のステータスは持ってたから、多少の余裕はできてたよ。それで、一度リサとキースに会っておきたいと思ったんだ。アイツらはやっぱり仲間だったから、きっと受け入れてくれる。ライドはいないけど、またいつかみたいに、みんなで世界を巡りたいって……そう思ってたんだ」
カズラは、ジルの話に口を挟まない。ジルも自分に回答を望んではいないだろうと思ったからだ。
「意気揚々とフレンドリスト見てさ……リサとキースの名前がなかったことに気づいたよ。それで泡食って石碑確認しに行ったら案の定さ。たぶん、人生で三番目くらいに動揺したかなぁ、あれは」
セリフだけは飄々としたものだったが、いつもの大袈裟な動作や口調ではない。その痛ましく思い、カズラは思わず視線を逸らしてしまった。
「それで戻って来たんだよ……死の恐怖ってのがね」
ジルはそう言うと、気を落ち着かせるようにため息をつく。
「オレンジ狩り始めたのも、それが原因さ。恐ろしさから逃れようとしたあまり、俺は誰かを殺して恐怖を振り払おうとしたんだ。オレンジとかレッドとかなら、殺したとこで気にするヤツなんていないし」
でもだからか、とジルが自嘲気味に首を振る。
「PoHに負けたのは、俺が怖がってたから……ステータスの強さなんて薄っぺらい自信にすがろうとしたせいだ。そしてPKからキースに矛先変えたのも、俺の弱さだったんだ。権利のない復讐をしようとしてさ……ホント、アホらしいわ」
ギリッとなにかに耐えるように歯を食いしばる音が隣から聞こえてきて、カズラは再びジルのほうを見る。
「キースがリサを殺したのは、俺のせいなんだ。俺が最初にアイツを仲間殺しと扱って見捨てたから……PoHに漬け込まれたんだ。でも、俺が許せないのはそんなことじゃない。今になって、やっと気づいたことが、許せない……!」
「ジル……」
カズラの視線に気づいて、ジルは皮肉げな笑みをうっすらと浮かべた。
「辛気くさい顔するなよ。この俺が珍
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