暁 〜小説投稿サイト〜
スペードの女王
第二幕その四
[2/2]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
肖像画も女性の様な目をした美男子である。
「けれどそれもね。過去の話」
「ですか」
「休んでいいわよ」
 そこまで話し終えると侍女に言った。
「私は一人でいたいから。いいわね」
「宜しいのですか?」
「たまには貴女も休みなさい」
 優しい声になった。
「いいわね」
「わかりました。じゃあ」
「ええ」
 こうして侍女は去り伯爵夫人だけになった。一人になるとまた溜息をついた。
「三枚のカードの秘密も教えてもらったわね」
 その時にあの謎の人物から教えてもらったことを思った。
「一、三、七」
 彼女はカードの番某を呟く。
「それが私を救ってくれた。そして」
 その時の伯爵との会話を思い出した。
「宜しいですか、奥様」
 ベルサイユの片隅で二人は話をしていた。若き日の美しい、妖艶な伯爵夫人とあの謎の伯爵が。二人は顔を見合わせて話をしていた。
「このカードの秘密を教えられるのは二人までです」
「二人まで」
「はい、この秘密には呪いがありまして」
 彼は言う。
「三人目に教えるならば貴女は命を落とされるでしょう」
「命を」
「私にはわかります」
 伯爵は伯爵夫人の琥珀の目の中に何かを見ていた。
「貴女はまず御主人に教えられます」
「はい」
「そして次には御主人の後の恋人に」
 つまり若い愛人である。
「最後は」
「最後は?」
「あまりにも激しい愛に狂った男にそれを話して」
「愛に狂った男にです」
「それは一体誰なのですか?」
「そこまではわかりません」
 彼はそれには首を横に振った。
「ですが」
「ですが!?」
「その男が来た時に貴女の人生は終わります」
「そうなのですか」
「彼は堕天使です」
「堕天使ですか」
「そうです。自分では気付いていません。ですが彼は堕天使に他ならないのです」
 その言葉は未来を見越しているようであった。このサンジェルマン伯爵については昔からとかく言われている。不老不死であるとも詐欺師だとも錬金術を窮めたとも。タイムマシンで時間を行き来するという説すらある。だが真相ははっきりしない。全てが謎のままである。
「彼は破滅します。ですがそれは貴女の手によってではなく」
「彼自身の手によって」
「それが運命なのです」
 伯爵の声は宣告の様であった。
「宜しいですね」
「わかりました」
 伯爵夫人は彼の言葉に頷いた。

[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ