30話「いまだ見えぬココロ」
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ていただいているなんて、すごく嬉しいです。けど、だからこそ…」
「人間相手には疑い深いエルフが、たかが半日共にいただけで、旅の仲間なろうか迷うのか。そのまま捕縛して売り払うかもしれないのに」
「そんなことしないでしょう。少なくとも、貴方は」
自信あり気に――寧ろどこか開き直った感で、クオリは言った。
「――なぜ?」
「わたしも一エルフとして魔法の腕に自信はありますが、そんなもの関係ないほど、貴方は強いです。わたしなんかより、遥かに。次元が違うと言っていいでしょう」
ちょこまかと動くユーゼリアをなんとなく目で追っていたアシュレイが、驚いたようにその目を見開いた。クオリに顔を向けると、そのまま真意を探るように2人は見つめ合う。
アシュレイの横顔を見つめる金色の瞳は、まるで全てを見透かしているかのような色を秘めていた。多くの時を生きてきた、老獪な獣のようだ。
「クオリ、ちょっと聞きたいんだが…」
「なんでしょう?」
「…随分綺麗だが、歳はいくつぐぇふぉ!」
右を見ると、いつの間に戻ってきていたユーゼリアが、正拳突きの構えでぷるぷると震えていた。
(けっこう今のは効いたな)
「女の子に年齢を聞いちゃいけません!!」
「え、あ、リ、リアさん――」
「クオリは黙ってて!」
「あ…はい」
申し訳なさそうにチラリと視線を向けられたので、気にするなという意味を込めて肩をすくめた。ユーゼリアの後ろでは店主が乾いた笑いを浮かべていた。
「あのねえ、アッシュ。これは記憶がどうとか関係ないことだけど、一応“常識”だから、教えとくわ」
(そんなに悪いことだったかな、クオリに年齢聞いたこと)
(別に年齢を気にするほど若くないので気にならないのですが……今のリアさんには通じなさそうですね。わたしの為に怒ってくれているのでしょうか…)
こめかみに青筋を浮かべて怒るユーゼリアに申し訳なさそうな表情を取り繕いつつ、内心でここまでガミガミ怒られることに疑問を抱いたアシュレイであった。
(……あれ? なんで私こんなに苛立ってるんだろう?)
その真意は、まだ誰も気づかないまま――。
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