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少女1人>リリカルマジカル
第二十六話 少年期H
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見事な平伏が披露された。むかつきはしたが、さすがにこれ以上殴るつもりはなかったので手を下ろす。とりあえず俺のこいつへの用件は終わったのだが、そのまま少し待つことにした。

 理由はわからないが、こいつは俺に用事があるのだろう。そうでなければ、殴られるかもしれないとわかっていながら、わざわざ気絶させたやつの傍にずっといるわけがない。またわけがわからないことをされるぐらいなら、多少時間は取ろう。あと初対面なのは間違いないはず…だよな? あまりにも自由すぎて酷い初めまして、に確信が持てないが。

「……それで、要件はなんだ」

 とにかく手っ取り早く終わらせよう。頭を下げていたそいつは、俺の問いかけに顔をあげるとじっと俺の目を見据えてくる。その目が真っ直ぐに俺へと向けられたため、たじろぎそうになったがなんとか表情には出さない。

 そいつのへらへらと浮かべていた笑みが一瞬消えたが、すぐに口元に弧ができる。だけどその笑みを見て、俺はさっきまでとは纏っていた雰囲気が違うことに気づく。先ほどまで伏せられていた目からはわからなかったが、こちらの様子を窺っているように感じた。


「さっきさ、見ちゃったんだ。君があのおじさんとぶつかってしまったところを」
「――ッ」

 ここに止まったのは失敗だったのかもしれない。ここにこいつがいたのは偶然ではなく、必然。咄嗟に俺はそいつと距離を取り、内心で盛大に舌打ちする。完全に油断していた。路地の中の方にいるため、さっきとは違い逃げる選択肢は難しい。魔法を使われる方が速いかもしれない。

 俺が少し後ろに下がったと同時に、そいつは片手をズボンのポケットの中に入れていた。膨らみから大きいものではないようだが、何が出てくるかわからない。視線はずっと俺に向けられており、さっきまで騒いでいたデバイスも静かに光を放っている。

 少なくとも逃げるのは無理だ。ならば、自分から相手に隙を作らせるしかない。

「へぇー、で? それでわざわざこんな路地裏に1人で追いかけてきたのかよ。……随分正義感がお強いことで」
「いやぁー、照れるなー。褒めるなよ」

 褒めてない。照れるな。通じろ皮肉。

『ますたーの思考回路って結構幸せですよね』
「そう? あとコーラルもそんなに褒めるなよ」

 気づけ、遠まわしのやんわり感をッ! 必死にもごもご言いそうになる口元に力を入れる。なんでこいつと会話すると、とことんずれるんだ。…ちょっと本気で帰ってもいいかな。


「し、しかしよく見えたな。あの人ごみの中で」
「たまたまかな。目はいい方だから。……なんかほっとけなくてさ」
「――あぁ、そういうこと」

 なんだ、結局はただの…偽善者か。そうだな、お前のようなやつから見れば確かに俺は可哀想な子どもに映る
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