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Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)
第二十九話 流れ出す前兆、軍靴の灯火
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言って黒円卓の聖槍を見せ、螢の方へと首を向けるカリグラ。それが癪に触ったのかエレオノーレは苛立ちの様子を深める。
「そうか。それで…貴様の言い分はそれだけか?」
驚愕があろうともエレオノーレにとってそれは地を這う虫が跳び跳ねたことに驚く程度のものであり、それが例えどれ程のものであったとしても大した意味をなさない。芋虫が蝶や蛾になった所で人がそれに対して脅威を感じないのと同じことだ。
「俺はこのヴェヴェルスブルグは随分便利なモノだと思う」
突然、話題を変えるカリグラ。何時に無く上機嫌な為か普段の言葉少なさに比べ、饒舌であった。
「確かアンタがコイツの初代に造る様に命じたんだろ。正直ありがたかったよ。これの性質は俺にとって非常に有用だ。似通ってるともいえる。俺の能力もコイツの能力も本質は奪うことだ」
礼すら述べるカリグラだがエレオノーレの怒りはその溜飲を下げたわけではない。苛立ちを込めながらも先の砲撃を防いだことを評価したのかカリグラに尋ねる。
「でだ、その程度の些事で私の邪魔をしたというのか」
ザミエルからしてみればどのような理由があろうとも自らの攻撃を邪魔立てされたことは許せるものではないのだ。
「ああ、その通りだ。俺は高みへと至りたいんだよ。アンタもアイツを取り込んだら仕留めてやるよ」
「よく言った。いいだろう、貴様から始末してやる」
そう言って砲を向けるエレオノーレ。だがカリグラは目の前の赤の砲兵を止める策を用意していた。
「知っているか?コイツは共鳴してるんだよ。なくした贄を取り返したいんだろうな」
そう言った瞬間、螢の右手に握っていた軍刀が
黒円卓の
(
ヴェヴェルスブルグ
)
聖槍
(
・ロンギヌス
)
に反応していた。それを見てザミエルは攻撃を行うことを躊躇う。或いはカリグラが行おうとしていることは自分にとって利になる事ではないのかと思い。
「これは
鞘
(
ペルソナ
)
だった。それをどうやって創り上げたかは知らない。だが、今持つ奴の剣を再び取り込めばそれは鞘ではない、ある種の一つの剣として完成する。
そして今、世界は揺らいでいる。この状況でこれを利用しない手立てはないだろう」
歩を進め螢に近づくカリグラ。必死に体に鞭を打ちながら立とうとする螢。
「起きなければそのまま取り込むだけだ。目覚めなければそのまま壊すだけだ。だからそこまで必死に立ち上がらなくともいいぞ」
「まだ…だッ……」
カリグラの挑発に対して剣で支えながらも体を起こし、その身を燃やそうとする。
「此処に来てなお、
戦乙女
(
ヴァルキュリア
)
は目覚ないか?お前だって界の揺らぎは認知しているだろう」
振りかぶり腐毒を撒き散らしながら螢を切り殺そうとしたその時、
『利用されるのは癪で
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