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Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)
第二十九話 流れ出す前兆、軍靴の灯火
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車と歩兵が戦うようなもの。威力が同じであってもぶつかれば被害は確実に後者の方が上なのだ。さらにいうなら螢は同じ威力を得る為に他を犠牲にしている。砲を前には心許ない甲冑と頼りない剣。紙にも等しい鎧と相手に届く武器。
結果、螢は前者の防御を捨て、少しでも勝つ可能性の高い後者を取った。そして、螢はその上で敗北しただけの話。
「貴様ッ……」
だがしかし、あくまでも予想通りなのは互いの一撃に関してのみ。この場で起きた出来事はこの場にいた二人にとって明らかに予想外だといえる状態だった。
「クク、反らされたか」
両者の決闘に無粋なまでに乱入してきた相手。それは黒く染まった大剣を片手に持つカリグラだった。
「惜しい、実に惜しいな。
今の絶好の機会を俺は逃してしまうなんて……」
今まで彼等の決闘を影で見て、この一撃に乱入してきた人物の正体はカリグラだった。狙いすましたタイミングは両者の溜めの一撃を放ったその瞬間。
そして、彼が機会を伺っていた理由はその剣を持ってして櫻井の唯一の血筋である螢を取り込もうとした為だ。
どれ程、極めた人間であろうと溜めの一撃、それを放った直後は隙を見せる。その一瞬を狙ったカリグラが螢を殺すことに失敗した理由は皮肉にも螢と相対していたエレオノーレであり、螢が砲撃に焼き尽くされなかったのもまた皮肉なことにカリグラのせいであった。
エレオノーレはカリグラの介入を直前で気付き、砲撃を無理矢理、二者に狙いを定めるようにしたのだ。その結果としてそれはカリグラの剣を反らすことになり、螢はエレオノーレの砲の直撃を受けることが無かった。
「ナウヨックスは飼い犬にすら手を噛まれたか。まあそんなことは如何でもいい。貴様、カリグラといったな―――失せろ」
そう言った直後、放たれる砲撃。エレオノーレはカリグラに対する興味など全くといっていい程持ち得ない。だから、そこに容赦などというものは当然のごとく存在しなかった。だが、
「う、オォォオラァァアァァ!!」
その砲撃をカリグラは正面から叩き返した。
「…何?」
その光景を目の当たりにし、流石にザミエルも驚愕を顕にする。ザミエルの今の砲撃は平団員では受け止めることの出来ないものだ。少なくとも今起き上がれていない螢では防ぎようの無いものだっただろう。
当然、無傷とは行かない。叩き返した剣を持つ両腕は焼け爛れており、その余波も防ぎきれなかった為か所々に火傷を負っていた。それでも彼はザミエルに対して挑むことの出来る土俵にいることは事実だった。
「カハハハッ!俺はアルフレートの聖遺物を奪って糧にしたんだよ。その分の魂は俺が奪って強化されてるってわけだ。まあ、アンタにはまだ届かない。だからコイツにアレを取り込ませてやろうって思ったんだよ」
そう
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