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Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)
第二十九話 流れ出す前兆、軍靴の灯火
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掛けるパシアス。俺はそれを聞いて何かが可笑しいと感じ始めていた。
「そう。貴方も彼もそして私自身も忘れてしまったその片鱗。それが此処に来て共鳴しあうように響いてるのよ」
―――■■■ス・■■ヒ■■■―――
「ッ!!」
何だ、俺はどうしたって言うんだ。このノイズは一体……?
―――■ハエ■・■■■ト■■―――
「これは……」
誰かの名前か?でも一体誰の……俺は知らない。だったら何でこんな……
―――ア■■・■ュヴ■■ゲ■■―――
パシアスとマキナが話し合う中で俺は一人頭に流れ続けるこの
名前や記憶
(
ノイズ
)
に侵蝕される。それから少しでも逃れようと俺はガムシャラに思考を反芻し続ける。
「マリィ……」
恐怖に震える。自分が自分で無くなる感覚。俺はアイツじゃないと否定するのにそれに飲まれてしまいそうになる恐怖。このままじゃ俺が消えてしまうんじゃないかと感じてしまい、縋りつくように俺はマリィに声を掛けた。
「大丈夫」
マリィのその声がやさしく響き、俺を安らげる。
「蓮はきっといなくならない。だからその声を聞いてあげて。蓮が私にそうしたように」
マリィは大丈夫だって言ってくれる。だけど、それでも俺がいなくなってしまうかもしれない不安はぬぐえない。
俺は怖いよ。苦しいよ。
痛いのなんか平気だし、死ぬのだって怖くない。
だけど俺は、ただマリィ―――
「忘れたくないッ」
君の事を忘れ、その手を離してしまうかもしれないことが、何よりも嫌で――――――
「だったら……私があなたに貰ったもので皆を包むよ」
その言葉を聞いて俺の恐怖が消えていくのを感じる。
「だから、勝って。それで思い出させてあげよう」
その声は何処までも透き通っており、宝石のように輝いていて―――
「わたしがみんなを抱きしめるから」
それはなんてやさしくて、なんて綺麗な宝物。無くしちゃいけない、日常の海にある宝石の欠片。
「わたしがいなくなることなんて、ないと信じて」
そして世界は無限に広がる。
******
―――諏訪原大橋―――
櫻井螢とエレオノーレによる
互いの一撃
(
・・・・・
)
は予想通りの決着となった。
「クッ…痛ッゥ……」
櫻井螢は自身の持ちうる力を全力で正面への敵へと突貫した。一方でエレオノーレはその攻撃を完全に届かせない消し去る程の砲撃を放った。結果は相殺。だがこの一撃での敗者は螢の方であったといえる。
砲撃での一撃によってエレオノーレに失うものなど精々その弾薬とそれに込めた魔力ぐらいである。一方で螢は己の身で突貫した以上、相殺したところでその衝撃を受け止めることとなるのだ。例えるなら同じ武器をもつ戦
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